元令嬢は俺様御曹司に牙を剥く 〜最悪な運命の相手に執着されていたようです〜
Prologue
「朝礼だって」
出勤早々に同僚に言われ、モニターの前に集まった。
私、玖珂色春の勤めるTSF――トミタ・スイーツ・ファクトリーは新進気鋭の製菓会社で、次々とヒット商品を産み出したことで有名になり、今は全国四箇所の工場に加え、東京の一等地に本社がある。
そんな会社の企画開発局に勤められて、私は幸せだ。元より食べることを大事にしてきた。新しい味を追求しながら新商品の企画開発に携わる毎日は、まるで私のための仕事と言っても過言ではない。――と、思う。
モニターに社長が映る。しかし、私の目はその隣で見切れて映る長身の若い男性を見ていた。
「我がTSFは久恩山グループに買収され――」
「げっ」
思わず声が漏れ、慌てて口を押さえた。けれど、彼を見間違うはずがない。高一の時から、私の頭に棲み着いたアイツ――
「――本日より、久恩山飛鳥がTSFの社長に就任いたしました」
――飛鳥が、我が社の社長だなんて!
「久恩山グループの御曹司じゃないか」
「わー、かっこいい♡」
そんな声に嫌気が差し、モニターから一人離れた。他社員の後頭部の間からチラチラ見える飛鳥の顔と声色は、あの頃より大人っぽい。確かに、格好良くなったと思う。
って、私は何を考えているんだ!
怒りと羞恥がいっぱいの、十年前。久恩山のお屋敷で過ごしたアイツとの出会いを、私は思い返した。
出勤早々に同僚に言われ、モニターの前に集まった。
私、玖珂色春の勤めるTSF――トミタ・スイーツ・ファクトリーは新進気鋭の製菓会社で、次々とヒット商品を産み出したことで有名になり、今は全国四箇所の工場に加え、東京の一等地に本社がある。
そんな会社の企画開発局に勤められて、私は幸せだ。元より食べることを大事にしてきた。新しい味を追求しながら新商品の企画開発に携わる毎日は、まるで私のための仕事と言っても過言ではない。――と、思う。
モニターに社長が映る。しかし、私の目はその隣で見切れて映る長身の若い男性を見ていた。
「我がTSFは久恩山グループに買収され――」
「げっ」
思わず声が漏れ、慌てて口を押さえた。けれど、彼を見間違うはずがない。高一の時から、私の頭に棲み着いたアイツ――
「――本日より、久恩山飛鳥がTSFの社長に就任いたしました」
――飛鳥が、我が社の社長だなんて!
「久恩山グループの御曹司じゃないか」
「わー、かっこいい♡」
そんな声に嫌気が差し、モニターから一人離れた。他社員の後頭部の間からチラチラ見える飛鳥の顔と声色は、あの頃より大人っぽい。確かに、格好良くなったと思う。
って、私は何を考えているんだ!
怒りと羞恥がいっぱいの、十年前。久恩山のお屋敷で過ごしたアイツとの出会いを、私は思い返した。
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