元令嬢は俺様御曹司に牙を剥く 〜最悪な運命の相手に執着されていたようです〜
「何だよ、じっと見て」

 不意に顔を上げた飛鳥に胸がドキリと鳴った。思わず顔をそらす。

「いや……私のこと、本当に好きなのかなって」
「好きだよ」

 飛鳥は被せ気味に即答する。思わず飛鳥の方を向いてしまい、目があった。瞬間、飛鳥がニヤリと微笑んだ。

「顔、真っ赤だな」
「な……っ!」

 思わず立ち上がった私を見て、飛鳥はクスクスと笑う。またからかわれたのだと分かり、息をこぼして着席した。

 悔しい! だったら、私だって!

「……でも、ありがと」
「何が?」
「この家のこと。恵美さんに聞いたの。色々、手を尽くしてくれたって」

 しおらしく言えば、案の定飛鳥は目をパチクリさせる。胸の中でガッツポーズを決め、いい気分になって続けた。

「でも、アンタの優しさは分かりにくいっていうか。もっとなんかこう、直接優しくしてくれないとさ、『好き』って気持ちも伝わって来ないっていうか」

 言いながら恥ずかしくなり、小鉢に箸を伸ばした。

「ふうん?」

 意味深な笑みを投げる飛鳥の前で、全て食べ終わってしまった私の箸が空を切る。そのまま、私は箸をパシンと箸置きに戻した。

「だから、何ていうか……とにかく分かりにくいんだよ、飛鳥は!」
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