元令嬢は俺様御曹司に牙を剥く 〜最悪な運命の相手に執着されていたようです〜
 ダイニングへ向かうと、飛鳥はテーブルについていた。いつも通りのスーツはジャケットを脱いだベスト姿で、けれどその長い脚を組んでコーヒーを飲みながら、タブレット端末を見ている姿は様になる。

 飛鳥がこちらに気づき、不意に目がった。じっと見つめられて、三秒。気恥しくなって、視線を着ていた服に向けた。

「どう、かな……?」
「俺の目に狂いは無かったな」

 飛鳥は満足そうに笑みを浮かべていた。

「いっつも同じパンツスーツじゃ色気もねーだろ」

 確かに、服代は節約するためにいつもスーツで中のTシャツやブラウスを着回していた。

 けれど、何で飛鳥がそんな事知ってんの!?

「お前のことなら何でも知ってんの」

 まるで心の内を読まれたかのような言葉に、余計にイライラが募る。

「もうじき運転手が来る。早く食わねーと、置いてくぞ」

 飛鳥はそう言うと、手にしていたコーヒーを口元にあてタブレットに視線を移した。ダイニングテーブルの上には、バターの塗られたトーストに、湯気を立てたスープと瑞々しいサラダ。

「いただきますよ、言われなくても!」

 私はガッと椅子を引き、そこに座ると押し込むように朝食を口に運んだ。
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