元令嬢は俺様御曹司に牙を剥く 〜最悪な運命の相手に執着されていたようです〜
この声は!
振り返ると案の定、飛鳥がいた。カツカツと黒い革靴を鳴らしながら、こちらに歩いてくる。するとなぜか、そのまま私の腰を抱き寄せた。
「色春、他の男近づけちゃダメだろ」
「いやいや、ただの試食だし。仕事だし! そう言う飛鳥は何しに来たのよ!」
「本社内の視察。会いに来たわけじゃなくて悪いな」
「そんなこと思ってない!」
思わず大声を上げると、飛鳥は微笑んだ。
「これ、チョコレート?」
飛鳥の疑問は私に投げられたものらしかったが、目の前にいた彼が答えた。
「はい。玖珂さん発案の試作品です。宝石みたいなチョコレートをテーマに――」
「へぇ」
飛鳥はそれを一粒摘む。自身の目の前に持ち上げ、不意に優しく微笑んだ。
「懐かしいな、チョコレート」
え? と思った時には、飛鳥の手は私の前にあった。コロンと、ルビーみたいなチョコレートが私の舌の上に乗る。
「美味しい?」
「はい……」
真っ赤になりながら答えたけれど、味など何も分からない。
「社長もいかがですか?」
「ありがとう」
飛鳥はそれから、試作室の中を見学しつつ所々で色々なことを聞き、最後に試作品が入った箱を手に出ていった。
どっと力が抜ける。けれど気を引き締め、それまで気もそぞろだったチョコレートに改めて向かい合った。
「玖珂さん、本当に社長の婚約者なんだね。仲良い」
微笑まれては、「そんなことないですよ」としか返せない自分にイラッとする。
「社長が他の社員に話しかけてる間もずっと目で追ってたし。相思相愛って感じ」
「だといいんですけど」
笑顔で返すと、「ノロケられるうちにノロケておきな」と意味不明なアドバイスを頂戴した。
決してノロケなんかじゃない!
振り返ると案の定、飛鳥がいた。カツカツと黒い革靴を鳴らしながら、こちらに歩いてくる。するとなぜか、そのまま私の腰を抱き寄せた。
「色春、他の男近づけちゃダメだろ」
「いやいや、ただの試食だし。仕事だし! そう言う飛鳥は何しに来たのよ!」
「本社内の視察。会いに来たわけじゃなくて悪いな」
「そんなこと思ってない!」
思わず大声を上げると、飛鳥は微笑んだ。
「これ、チョコレート?」
飛鳥の疑問は私に投げられたものらしかったが、目の前にいた彼が答えた。
「はい。玖珂さん発案の試作品です。宝石みたいなチョコレートをテーマに――」
「へぇ」
飛鳥はそれを一粒摘む。自身の目の前に持ち上げ、不意に優しく微笑んだ。
「懐かしいな、チョコレート」
え? と思った時には、飛鳥の手は私の前にあった。コロンと、ルビーみたいなチョコレートが私の舌の上に乗る。
「美味しい?」
「はい……」
真っ赤になりながら答えたけれど、味など何も分からない。
「社長もいかがですか?」
「ありがとう」
飛鳥はそれから、試作室の中を見学しつつ所々で色々なことを聞き、最後に試作品が入った箱を手に出ていった。
どっと力が抜ける。けれど気を引き締め、それまで気もそぞろだったチョコレートに改めて向かい合った。
「玖珂さん、本当に社長の婚約者なんだね。仲良い」
微笑まれては、「そんなことないですよ」としか返せない自分にイラッとする。
「社長が他の社員に話しかけてる間もずっと目で追ってたし。相思相愛って感じ」
「だといいんですけど」
笑顔で返すと、「ノロケられるうちにノロケておきな」と意味不明なアドバイスを頂戴した。
決してノロケなんかじゃない!