元令嬢は俺様御曹司に牙を剥く 〜最悪な運命の相手に執着されていたようです〜
 伯母の家を出て、高速に乗る。

「ランチ食ってくか」

 不意に飛鳥に聞かれ、あれ? と思った。

「予定があるんじゃなかったの?」
「まあ、あるっちゃあるけど。でもそれは夜だし、まだ時間あるし」

 何となく伯母の近くに居たくなかったんだろうなぁ、と察して私は口を噤んだ。

「食いたいもんあるか?」
「別に……あ」

 不意にハンバーガーのチェーン店が目に入った。たった一週間だけれど、毎日恵美さんのご飯に食べ慣れてしまってはジャンクフードが恋しくなる。

「あのお店、行っていい?」
「は?」

 指差し言えば、飛鳥が怪訝な顔をした。

「いいじゃん、私にはこっちのほうが馴染みなの。嫌だったら、ドライブスルーで」
「…………分かったよ」

 飛鳥に車を進めてもらい、ドライブスルーで注文する。飛鳥の車が左ハンドルで良かった。注文の仕方を説明する手間が省けたから。

「飛鳥は? 何食べる?」
「アイスコーヒー、ブラックで」
「だけ?」
「悪いか?」
「いいけど」

 受取カウンターで私の分のハンバーガーと飛鳥のアイスコーヒーを受け取る。ストローを差して飛鳥にコーヒーを手渡すと、そのまま口に運んでくれた。私も袋からハンバーガーを取り出し、かぶりつく。

 そうそう、この味!

 久々の味を頬張っていると、隣からケラケラと笑い声が聞こえた。

「お前、食い方豪快」
「いいでしょ別に! そういう飛鳥は偏食だし!」

 飛鳥の手元を見る。コーヒーは運転席横のホルダーに収められ、代わりに試作室でもらったチョコレートを口に運んでいた。

「うまいんだよ、これ」

 でしょうね。だって、このチョコレートは――

「懐かしい味がするんたよ」

 ――思い出の味の、再現だから。
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