元令嬢は俺様御曹司に牙を剥く 〜最悪な運命の相手に執着されていたようです〜

桜のダイヤモンド

 レジデンスに戻ると、なぜか見知らぬ女性たちに出迎えられた。彼女たちは高級ブティックの販売員とヘアメイクアーティストらしく、なぜか私を取り囲むとすぐにリビングに誘った。

「奥様、お気に召したものは何でもどうぞ」

 お、奥様……。

 告げられた言葉に動揺したが、それ以上にリビングに広げられたものたちに驚いた。

 ドレス、ドレス、ドレス! 全部ドレス!

「選んで持ってきてもらったんだが、お前は――これだな」

 飛鳥がスカーレット色のドレスを指差す。

「え、派手じゃない? っていうか、何で急にドレス!?」
「派手なくらいでちょうどいいんだよ。ちなみにお前は今夜これを来て、俺の隣にいること」
「はぁ!?」
「言ったろ、夜に予定があるって」

 その予定って、飛鳥だけじゃなかったんだ。でも、ドレスを着るということは、ドレスコードがあるということで。

「どこに行く気!?」
「俺とお前の婚約お披露目パーティ」

 初めて他人にメイクアップしてもらい、髪の毛もセットしてもらう。飛鳥の選んだスカーレット色のドレスに着替えると、鏡に映ったのはどこかのご令嬢のようだった。

 幼い頃に何度か出席した、華やかな社交場を彷彿とさせる。まさか、自分がこんな格好をする日がくるなんて。

 部屋にいた女性たちは、私が着替え終わると「ウェディングドレスもうちにお任せくださいね」などと言いながら帰っていった。

 私のドレスに合わせて、飛鳥も着替えていた。光沢感のあるネイビーブルーの細身のスーツ。ブルーのシャツに、ネクタイとハンカチーフは私のドレスと同じスカーレット色だ。
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