元令嬢は俺様御曹司に牙を剥く 〜最悪な運命の相手に執着されていたようです〜
「綺麗だな」

 何の躊躇いもなく、まっすぐにこちらを見た飛鳥の言葉に胸がドキリと鳴った。

 何これ、まるで私が飛鳥のこと好きみたいじゃない!

 火照る頬を隠したいが、下手に触ってメイクを崩すわけにはいかない。ドギマギしていると、飛鳥が不意に私の左手を握った。

「ちょ、ちょっと、何!?」

 驚いている間に、薬指にひんやりとした何かがはまった。

「お前が俺のものである、証」

 やたらと輝く薬指を持ち上げ、まじまじと見る。ゴールドに光るリングは繊細で優美なウェーブを描き、中央の大きな宝石を支えている。

「八十七面体のダイヤモンドだ。真ん中が、桜の花みたいに見えるカットなんだと」

 飛鳥に言われて目を凝らせば、中央に桜の花のように五つの花弁があるように見えた。

「色春にぴったりだろ」

 その言葉に、胸が震えた。

「……ありがと」
「何だよ、やたら素直だな」
「悪い?」
「好き」

 突然囁かれた言葉に、また頬が熱くなる。ふいっと顔を逸らすと、飛鳥はケラケラと笑った。

「行くぞ。迎えが来てる」

 飛鳥はそう言うと私に肘を突き出した。だから私は、勢いよくそこに手を乗せる。すると飛鳥も、勢いよく私の腰を抱き寄せる。

 ムッとしながら、でも内心嬉しくて。馬鹿だなぁ、と思いながらも、そんな時間が心地よかった。
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