元令嬢は俺様御曹司に牙を剥く 〜最悪な運命の相手に執着されていたようです〜
「くすねたって……別に言わないよ、そっちの事情とか知らないし」

 久恩山家には久恩山家のルールがあるのかもしれないが、私には関係ない。ここにいるのも、高校を卒業するまでの間だけなのだ。

「ふーん」

 飛鳥は言いながら立ち上がり、私の前までやってくると――

「でも一応、これ口止め料」

 ――と、私の口にチョコレートを一粒押し込んだ。

 反論しようとする私の前で、飛鳥はぺろりと自身の指についたチョコを舐め取る。その仕草が妙に色っぽくて、私の頬は急に熱くなってしまった。

「お前、年上のくせにこんなんで赤くなるんだな」

 飛鳥が目の前で、ケラケラ笑う。それから急に、妖艶に微笑んだ。

「なぁ、知ってる? チョコレートって、媚薬効果があるらしい」
「生意気っ!」

 私は顔を真っ赤にしながら、慌てて食料庫を出た。
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