元令嬢は俺様御曹司に牙を剥く 〜最悪な運命の相手に執着されていたようです〜
「顔真っ赤」

 キッと目を開ける。飛鳥は私の顔のすぐ横に手をついたまま、ケラケラと笑っていた。

「あの頃と変わんねーな、お前」

 からかわれた!

 再び睨むもニッと笑われ、イラついた私はフンッと顔を背けた。

「こっち見ろよ。好きな女にそっぽ向かれたら傷つくだろ」
「好きって何? 私をからかってるだけじゃない!」
「好きなんだよ。お前が、どうしようもなく」

 そんなの、信じられるか!

「前に会ったの何年前だと思ってるの!? そもそもあの一年しか接点ないし、っていうかお屋敷広すぎてあんまり会わなかったじゃない」
「好きになるのに期間も何も関係ない」

 飛鳥は言いながら、もう一度私に顔を近づけた。覗き込まれ、その瞳から逃げられなくなる。

「ともかく色春、お前は今日からお前は俺の婚約者。よろしくな」
「私、そんなの望んでない!」

 噛みつくように言えば、飛鳥はたじろいだ。けれどそれも、一瞬のこと。すぐに自信に溢れた笑みを浮かべる。
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