総長様は可愛い義妹に永遠の愛を​​捧ぐ
沙奈を奪われた恨みを発散するかのように人を殴り、殴り、そうすることで自分の心を殺した。

喧嘩はさほど強くはなかったが、金を積めば暴走族くらい立ち上げれた。

それが、”‬狂乱火‪”‬。

気を散らすにはうってつけだった。

でも、ある時。

‪”‬Tired Bear‪”との戦いに、うちは負けた。

初めて、最強だと思っていたものを奪われ、それは沙奈を突然奪われたあの時と似ている気がした。

失ったもの全部奪いたかった。

奪い返したかった。

殺したはずの心が…欲望が、どんどん溢れていくようで。

ーーはじめまして!中野久音です!僕ずっと響さんに憧れてて……っ

自分を偽って”‬Tired Bear‪”に、潜入した。

最初はただ、”‬Tired Bear‪”を潰せればいい、とだけ思っていた。

でも、まほちゃんが倉庫に来た時。

ーーお兄ちゃぁー…っ

ひどく懐かしい‪”‬お兄ちゃん‪”‬という言葉を耳にした時。
喉から手が出るほど。

欲しい、と思う自分がいた。

沙奈を取り戻したい、と。

またひとつ欲望が加速していった気がした。

その時。気付いたんだ。

僕は本当に欲しいものは……

沙奈なんだ、って。

暴走族なんてどうでもいい。

ただ、僕は……



また沙奈と生きたい───────。
< 141 / 182 >

この作品をシェア

pagetop