総長様は可愛い義妹に永遠の愛を​​捧ぐ
ーーそうして僕は行動を起こした。

”‬Tired Bear‪”の倉庫に理由をつけて響さんを呼び出し、その隙にまほちゃんを連れ去った。

脳の中の記憶を司る海馬。

そこに一定時間刺激を与えると記憶がなくなる。父の会社で開発中の、機械を使ってまほちゃんの記憶を奪った。

実際はトラウマなどの改善の為に使用されるべきものだったが悪用した。

まだ試作段階だったし半信半疑だったが目が覚めたまほちゃんは何もかも忘れていた。

「君の名前はね…”‬沙奈”‬だよ」

そうしてまほちゃんには、沙奈になってもらった。

「もう大丈夫だよ。“また”一緒に生きてこうね」

抱きしめた温もりは、沙奈のものじゃなかった。

でも……そんなことは気付かないフリをした。何度も自分に言い聞かせた。

沙奈は生きてる。

ほら。ここにいる。

死んでなんかない。

また一緒に居られるんだ。

いつからかそう思い込むことで、悲しみは紛れ心の拠り所になっていた。

沙奈を失ってからずっと自暴自棄だった。

跡継ぎの仕事も放棄して、学校もサボり、家にもろくに帰らずにいたが、沙奈(・・)とまた、暮らし始めたことで、心に平穏が戻っていった。

昼間は親父の仕事を継ぐ為、時々家にも帰るようにした。両親はそんな僕を見て安心しているように見えた。

沙奈(・・)がそばに居てくれることで、全てがいい方に向かっていった。

……はずだった。
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