総長様は可愛い義妹に永遠の愛を​​捧ぐ
お外出たい、って行った時。

久音くんはなんだかんだいって連れて行ってくれた……。

もしかしたらお兄ちゃんたちに見つかっちゃうかもしれないのに、それでも私のわがままを聞いてくれたんだ。

私のことだって、縛り付けておけばきっと一生見つかることは無かった。

でもそれをしなかったのは…

きっと久音くんは沙奈ちゃんのわがままを何でも聞いてあげるような、ちょっと振り回されがちな優しいお兄ちゃんだったからなんだと思う。

それが本来の久音くんの姿なんだと思う。

こんなお兄ちゃんをもって、沙奈ちゃんはきっとすごく幸せだったはず。

私が沙奈ちゃんとして久音くんと一緒に過ごした時間は本当に幸せだったから。


ーーそれはまだ私が記憶をなくしたての頃。

久音くんがお兄ちゃんだと教えられたその日。

『お兄ちゃんって呼んでいい?』

そう尋ねたことがあった。

でも返ってきた返事は

『ううん、名前で呼んでほしいな』

だった。

その時は何とも思ってなかったけど、今思うと…、久音くんにとって、‪”‬お兄ちゃん‪”‬は沙奈ちゃんだけのものだから…なのかな。

そんなふうに呼べるのは、妹だけの特権。

私にとっての‪”‬お兄ちゃん‪”‬がお兄ちゃんだけなのと一緒で、沙奈ちゃんにとっての‪”‬お兄ちゃん‪”‬は久音くんだけ。

きっと、そういう事だったんだと、久音くんの立ち去る背中を見つめながらぼんやりと考えていた。
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