学園王子の彗先輩に懐かれています
2 学園の王子様に懐かれたみたいです
2
○朝。学校の校門から校舎までの道の途中
奈子の前には昨夜の男の子、彗。その少し後ろに、王子2人とそれを囲っているたくさんの女子。
王子2人からは興味深そうな視線、女子たちからは恨みの視線、隣にいる瑠美からは羨望の眼差しを向けられている奈子。
彗「……ネコだ」
嬉しそうにクスッと笑う。
全員「!!」
笑った彗を見て、王子2人と女子たちが衝撃を受ける。
瑠美はあまりの尊さにほぼ意識を失っている。
奈子はそんな眩しい笑顔よりも、周りからの視線が怖くて怯えていた。
奈子(も、もしかして……この人が噂の王子!?)
頭の中で、さっき瑠美から受けた説明を思い出す。
奈子(『ストイック王子』……違う!『スマイル王子』……違う! ということは……『アンニュイ王子』!?)
空想の瑠美「いつもボーーっとしたマイペースな王子だけど、その見た目の麗しさはレベル違い!!」
奈子(当てはまる! って、待って。たしか……)
空想の瑠美「遠くからそっと見つめていたい王子No.1で、女子たちの中で勝手に話しかけたらいけないっていう暗黙のルールがあるくらい崇拝されているんだって!」
瑠美の説明を完全に思い出し、さらに顔が青くなる。
周りにいる女子を恐る恐る見ると、みんな敵意むき出しの顔で奈子を見ていた。
奈子(私からは話しかけてないけど、これって絶対ダメなやつだよね!?)
周りにピリピリとした空気が流れていることに気づいていない彗は、一歩前に出て奈子に近づいた。
そして、奈子の薄茶色のふわふわな猫っ毛に優しく触れて、顔を近づけてくる。
彗「ネコ、この高校だったんだ?」
奈子「…………」
あまりの近さに硬直。
ストイック王子「彗が……」
スマイル王子「女の子に話しかけた!?」
女子の集団「ぎゃああああーー」(阿鼻叫喚)
外にいた女子だけでなく、校舎の中から王子たちの登校を見守っていた女子たちも全員叫ぶ、カオスな空間。
迷惑そうに顔を歪めて周りを振り返る彗。
彗「……うるさいな」
奈子(今のうちにっ)
ダッと校舎に向かって走り出す。
彗「あっ……」
瑠美「奈子!?」
彗「…………」
走っていく奈子の後ろ姿を見つめる。
奈子がいなくなった途端、スマイル王子──草藦湊斗(そうま みなと)とストイック王子──音石律之進(おといし りつのしん)が彗の肩に腕を回す。
彗「!」
湊斗は穏やかそうな顔でいつもニコニコしている人当たりの良い見た目。そしてイケメン。
律之進はスポーツマンっぽい短髪で、目つきが悪く怖がられやすい見た目。そしてイケメン。
湊斗「ちょっと、彗! 誰? あの子」
律之進「知り合いか?」
彗「まあ」
湊斗「本当に? 思いっきり彗から逃げてたじゃん」
彗「…………」
ムスッと不機嫌そうな顔をする彗を見て、めずらしい反応に驚く(おもしろがる)湊斗と律之進。
彼女ではないみたいだけど、いまいちどんな関係かわからずモヤモヤした顔で彗を見つめるファンの女子たち。
○教室(奈子のクラス)
席に着いていた奈子のところへ、興奮した瑠美がやってくる。
瑠美「奈子!! さっきのどういうこと!?」
奈子「……え?」
瑠美「彗先輩のことだよっ! あの人が1番人気の彗先輩だと思う! 知り合いだったの!?」
奈子(あの人、彗って名前なんだ)
奈子「知り合いじゃないよ。お店に……」
そこまで言ってハッとする。
ここで自分の家の定食屋に彗先輩が来たと言ったなら、そのファンが店に押しかけてくるかもしれない。
お客さんとしてならいいけど、店の前で待ち伏せされたりするのは困ると考える奈子。
奈子「えーーと、前にちょっと会ったことがあるだけ」
瑠美「ネコって言ってたのはなんなの?」
奈子「私の名前を聞き間違えて、ネコって覚えてるみたい」
瑠美「じゃあ、知り合いってほどじゃ……」
奈子「ないない! ただの顔見知りだよ」
瑠美「なーーんだ」
ガッカリと肩を落とす瑠美。
前の席の子がまだ来ていないのをいいことに、勝手に椅子に座っている。
瑠美「でもさ、本当にかっこよかったよね! 3人とも!」
落ち込んだはずの瑠美は、また瞳を輝かせて話し出した。
瑠美「王子様って言われてるだけあるよね。みんなキラキラしてて、アイドルみたいだった……!」
奈子「まあ……たしかに」
奈子(ファンクラブがあるのも納得……)
瑠美「あんな風に話しかけてきてくれるなら、仲良くなれるんじゃないかな?」
奈子「え……」
奈子(彗先輩と仲良く?)
顔を近づけて「ネコ」って呼ばれたのを思い出しドキッとすると同時に、ものすごい目で睨んできた女子たちを思い出しゾッとする。
奈子の中で、『王子と仲良くなる<<<<平穏な高校生活』の図が出来上がる。
奈子(ないないない!! あの人には近づいちゃダメだ!!)
首をフルフル横に振りながら、心の中で決意する。
奈子(私は友達をたくさん作って、楽しい高校生活を送りたいんだから! できるだけ関わらないようにしよう!)
──と思っていたのに。
○夜。奈子の母の定食屋。
いつものように店のお手伝いをしていた奈子は、入口に立っている男3人を見て呆然とした。
そこには、学校の王子様3人が立っていた。
奈子「…………」
湊斗「こんにちは! ネコちゃん!」
彗「空いてるとこ、座っていい?」
律之進「…………」
奈子(なんで、この人たちがここに……!?)
昨夜もカウンターに座っていた常連さん(おじさん)と、昨日はいなかった常連さん(おばさん)が目をチカチカさせてイケメン3人組を見ている。
同じくあまりのイケメンぶりに目を眩ませていた母が、ハッとして会話に入ってくる。
母「あっ、どうぞ! 好きなところに座って!」
湊斗「じゃあ、ここでいっか〜」
3人席に大人しく座る王子3人。
普通の小さな定食屋さんに似つかわしくない光景で、現状がまだ把握できていない奈子はポカンとしたままだ。
奈子(……すごい。この3人がいるだけで、オシャレなカフェに見える……!)
メニューを見ていた彗が、顔を上げて奈子を手招きする。
戸惑いながらも席に向かう奈子。
奈子「あの……」
湊斗「俺、唐揚げ定食で!」
奈子「え」
律之進「生姜焼き定食大盛り」
奈子「え、あの」
奈子(えっ? 本当にお客さんとして来たの?)
彗「俺、オムライス」
奈子(また?)
テーブルに肘をつき、頬杖をついて甘えるように奈子を見上げる彗。
顔は無表情なのに、どこか気を許してくれているオーラを感じる。
彗「ネコが作って」
奈子「えっ?」
奈子と同じように驚く湊斗たち。
奈子「でも、今日はお母さんがちゃんと……」
彗「ネコのオムライスが食べたい」
奈子(ネコのオムライスって……)
可愛い猫がオムライスを作っている姿を想像してしまう奈子。
彗「だめ?」
奈子「うっ」
少し首を傾げて聞いてくる彗の破壊力にキューーンとする奈子。
男としてではなく、捨てられた子犬に見つめられたときのような胸のときめきである。
奈子「……私の作ったものでいいなら」
彗「うん。ネコのがいい」
奈子「…………」
奈子(この人……天然のたらしだ……!)
湊斗「何何〜? ネコちゃんのご飯、そんなに美味しいの? じゃあ俺のもネコちゃんが作ってよ」
奈子「え……」
彗「だめ」
奈子・湊斗・律之進「!」
彗「ネコは俺のだけ作って」
奈子「…………はい」
湊斗・律之進「…………」
奈子が調理場に戻ったあと、ニヤけそうになるのをこらえた湊斗が小さい声で彗に尋ねる。
湊斗「なんか……思ったよりも執着してる感じ?」
彗「何が?」
湊斗・律之進「…………」
本気でわかっていない彗を見て、それ以上何も聞けなくなる2人。
いろいろ察した湊斗は、呆れたようなため息をついた。
湊斗「まあ、彗はあまり人と関わらない分、懐くと一気に距離感が近くなるからなぁ……」
律之進「女相手だと危険だけどな」
湊斗「でもあの子は彗から逃げてたくらいだし、大丈夫かもね。今も特にキャーキャー言ったりしなかったし」
律之進「言うような女に彗は懐かないだろ」
湊斗「たしかに」
そんな2人の会話に入ることもなく、ジッと料理をしている奈子を見てる彗。
○定食屋の外。
食事と会計を終え、外に出る3人と見送りをする奈子。
湊斗「はーーっ、食った! ごちそうさまでした〜! 唐揚げほんとにうまかったよ」
律之進「生姜焼きもうまかった」
奈子「ありがとうございました」
彗「また来る」
そう言って、少し離れたところに停まっていた高級車に乗り込む3人。
誰の家の車かわからないけれど、運転手らしき人が乗っていて改めて瑠美の言っていた『みんなお金持ち』という言葉に納得する。
奈子(昨日はおサイフもスマホも持ってないって言ってたからお金がない学生なのかと思っちゃったけど、ただ何も持たずに外に出てただけだったみたいね。彗先輩っぽい……)
店に入ると、母と昨日もいた常連さんがすぐに話しかけてくる。
母「ねえ! あの子、昨日の子だよね? お金たくさん払ってたみたいだけど大丈夫なの?」
奈子「あの人、昨日はたまたま何も持ってなかっただけみたい。昨日のオムライスの分も払ってくれたよ」
常連男「なんだ。そうだったのか〜。それにしても、イケメンの友達はイケメンなんだな」
常連女「本当に目の保養だったわ〜」
奈子(あ。そういえば、学校では話しかけないでくださいって言うの忘れちゃったな。……まぁ、学年も違うし会わないように気をつければいっか)
○次の日。学校の廊下。
移動教室のため、教科書を持って瑠美と歩いていた奈子。
たまたま廊下を歩いていた王子3人組とバッタリ会う。
湊斗「あっ、ネコちゃんだ〜! 昨日はどうもっ」
律之進「移動教室か?」
彗「……ノート落ちそうになってる」
王子3人から声をかけられている奈子を、隣にいる瑠美は神を見るような目で見つめてきた。
廊下にいる先輩女子や、教室から顔を出して王子を見ていた先輩女子たちは、昨日よりさらに激しい憎悪の目で奈子を見ている。
奈子(あれ……? 私の高校生活、さらにピンチ……?)
半泣き状態のまま固まる奈子。
○朝。学校の校門から校舎までの道の途中
奈子の前には昨夜の男の子、彗。その少し後ろに、王子2人とそれを囲っているたくさんの女子。
王子2人からは興味深そうな視線、女子たちからは恨みの視線、隣にいる瑠美からは羨望の眼差しを向けられている奈子。
彗「……ネコだ」
嬉しそうにクスッと笑う。
全員「!!」
笑った彗を見て、王子2人と女子たちが衝撃を受ける。
瑠美はあまりの尊さにほぼ意識を失っている。
奈子はそんな眩しい笑顔よりも、周りからの視線が怖くて怯えていた。
奈子(も、もしかして……この人が噂の王子!?)
頭の中で、さっき瑠美から受けた説明を思い出す。
奈子(『ストイック王子』……違う!『スマイル王子』……違う! ということは……『アンニュイ王子』!?)
空想の瑠美「いつもボーーっとしたマイペースな王子だけど、その見た目の麗しさはレベル違い!!」
奈子(当てはまる! って、待って。たしか……)
空想の瑠美「遠くからそっと見つめていたい王子No.1で、女子たちの中で勝手に話しかけたらいけないっていう暗黙のルールがあるくらい崇拝されているんだって!」
瑠美の説明を完全に思い出し、さらに顔が青くなる。
周りにいる女子を恐る恐る見ると、みんな敵意むき出しの顔で奈子を見ていた。
奈子(私からは話しかけてないけど、これって絶対ダメなやつだよね!?)
周りにピリピリとした空気が流れていることに気づいていない彗は、一歩前に出て奈子に近づいた。
そして、奈子の薄茶色のふわふわな猫っ毛に優しく触れて、顔を近づけてくる。
彗「ネコ、この高校だったんだ?」
奈子「…………」
あまりの近さに硬直。
ストイック王子「彗が……」
スマイル王子「女の子に話しかけた!?」
女子の集団「ぎゃああああーー」(阿鼻叫喚)
外にいた女子だけでなく、校舎の中から王子たちの登校を見守っていた女子たちも全員叫ぶ、カオスな空間。
迷惑そうに顔を歪めて周りを振り返る彗。
彗「……うるさいな」
奈子(今のうちにっ)
ダッと校舎に向かって走り出す。
彗「あっ……」
瑠美「奈子!?」
彗「…………」
走っていく奈子の後ろ姿を見つめる。
奈子がいなくなった途端、スマイル王子──草藦湊斗(そうま みなと)とストイック王子──音石律之進(おといし りつのしん)が彗の肩に腕を回す。
彗「!」
湊斗は穏やかそうな顔でいつもニコニコしている人当たりの良い見た目。そしてイケメン。
律之進はスポーツマンっぽい短髪で、目つきが悪く怖がられやすい見た目。そしてイケメン。
湊斗「ちょっと、彗! 誰? あの子」
律之進「知り合いか?」
彗「まあ」
湊斗「本当に? 思いっきり彗から逃げてたじゃん」
彗「…………」
ムスッと不機嫌そうな顔をする彗を見て、めずらしい反応に驚く(おもしろがる)湊斗と律之進。
彼女ではないみたいだけど、いまいちどんな関係かわからずモヤモヤした顔で彗を見つめるファンの女子たち。
○教室(奈子のクラス)
席に着いていた奈子のところへ、興奮した瑠美がやってくる。
瑠美「奈子!! さっきのどういうこと!?」
奈子「……え?」
瑠美「彗先輩のことだよっ! あの人が1番人気の彗先輩だと思う! 知り合いだったの!?」
奈子(あの人、彗って名前なんだ)
奈子「知り合いじゃないよ。お店に……」
そこまで言ってハッとする。
ここで自分の家の定食屋に彗先輩が来たと言ったなら、そのファンが店に押しかけてくるかもしれない。
お客さんとしてならいいけど、店の前で待ち伏せされたりするのは困ると考える奈子。
奈子「えーーと、前にちょっと会ったことがあるだけ」
瑠美「ネコって言ってたのはなんなの?」
奈子「私の名前を聞き間違えて、ネコって覚えてるみたい」
瑠美「じゃあ、知り合いってほどじゃ……」
奈子「ないない! ただの顔見知りだよ」
瑠美「なーーんだ」
ガッカリと肩を落とす瑠美。
前の席の子がまだ来ていないのをいいことに、勝手に椅子に座っている。
瑠美「でもさ、本当にかっこよかったよね! 3人とも!」
落ち込んだはずの瑠美は、また瞳を輝かせて話し出した。
瑠美「王子様って言われてるだけあるよね。みんなキラキラしてて、アイドルみたいだった……!」
奈子「まあ……たしかに」
奈子(ファンクラブがあるのも納得……)
瑠美「あんな風に話しかけてきてくれるなら、仲良くなれるんじゃないかな?」
奈子「え……」
奈子(彗先輩と仲良く?)
顔を近づけて「ネコ」って呼ばれたのを思い出しドキッとすると同時に、ものすごい目で睨んできた女子たちを思い出しゾッとする。
奈子の中で、『王子と仲良くなる<<<<平穏な高校生活』の図が出来上がる。
奈子(ないないない!! あの人には近づいちゃダメだ!!)
首をフルフル横に振りながら、心の中で決意する。
奈子(私は友達をたくさん作って、楽しい高校生活を送りたいんだから! できるだけ関わらないようにしよう!)
──と思っていたのに。
○夜。奈子の母の定食屋。
いつものように店のお手伝いをしていた奈子は、入口に立っている男3人を見て呆然とした。
そこには、学校の王子様3人が立っていた。
奈子「…………」
湊斗「こんにちは! ネコちゃん!」
彗「空いてるとこ、座っていい?」
律之進「…………」
奈子(なんで、この人たちがここに……!?)
昨夜もカウンターに座っていた常連さん(おじさん)と、昨日はいなかった常連さん(おばさん)が目をチカチカさせてイケメン3人組を見ている。
同じくあまりのイケメンぶりに目を眩ませていた母が、ハッとして会話に入ってくる。
母「あっ、どうぞ! 好きなところに座って!」
湊斗「じゃあ、ここでいっか〜」
3人席に大人しく座る王子3人。
普通の小さな定食屋さんに似つかわしくない光景で、現状がまだ把握できていない奈子はポカンとしたままだ。
奈子(……すごい。この3人がいるだけで、オシャレなカフェに見える……!)
メニューを見ていた彗が、顔を上げて奈子を手招きする。
戸惑いながらも席に向かう奈子。
奈子「あの……」
湊斗「俺、唐揚げ定食で!」
奈子「え」
律之進「生姜焼き定食大盛り」
奈子「え、あの」
奈子(えっ? 本当にお客さんとして来たの?)
彗「俺、オムライス」
奈子(また?)
テーブルに肘をつき、頬杖をついて甘えるように奈子を見上げる彗。
顔は無表情なのに、どこか気を許してくれているオーラを感じる。
彗「ネコが作って」
奈子「えっ?」
奈子と同じように驚く湊斗たち。
奈子「でも、今日はお母さんがちゃんと……」
彗「ネコのオムライスが食べたい」
奈子(ネコのオムライスって……)
可愛い猫がオムライスを作っている姿を想像してしまう奈子。
彗「だめ?」
奈子「うっ」
少し首を傾げて聞いてくる彗の破壊力にキューーンとする奈子。
男としてではなく、捨てられた子犬に見つめられたときのような胸のときめきである。
奈子「……私の作ったものでいいなら」
彗「うん。ネコのがいい」
奈子「…………」
奈子(この人……天然のたらしだ……!)
湊斗「何何〜? ネコちゃんのご飯、そんなに美味しいの? じゃあ俺のもネコちゃんが作ってよ」
奈子「え……」
彗「だめ」
奈子・湊斗・律之進「!」
彗「ネコは俺のだけ作って」
奈子「…………はい」
湊斗・律之進「…………」
奈子が調理場に戻ったあと、ニヤけそうになるのをこらえた湊斗が小さい声で彗に尋ねる。
湊斗「なんか……思ったよりも執着してる感じ?」
彗「何が?」
湊斗・律之進「…………」
本気でわかっていない彗を見て、それ以上何も聞けなくなる2人。
いろいろ察した湊斗は、呆れたようなため息をついた。
湊斗「まあ、彗はあまり人と関わらない分、懐くと一気に距離感が近くなるからなぁ……」
律之進「女相手だと危険だけどな」
湊斗「でもあの子は彗から逃げてたくらいだし、大丈夫かもね。今も特にキャーキャー言ったりしなかったし」
律之進「言うような女に彗は懐かないだろ」
湊斗「たしかに」
そんな2人の会話に入ることもなく、ジッと料理をしている奈子を見てる彗。
○定食屋の外。
食事と会計を終え、外に出る3人と見送りをする奈子。
湊斗「はーーっ、食った! ごちそうさまでした〜! 唐揚げほんとにうまかったよ」
律之進「生姜焼きもうまかった」
奈子「ありがとうございました」
彗「また来る」
そう言って、少し離れたところに停まっていた高級車に乗り込む3人。
誰の家の車かわからないけれど、運転手らしき人が乗っていて改めて瑠美の言っていた『みんなお金持ち』という言葉に納得する。
奈子(昨日はおサイフもスマホも持ってないって言ってたからお金がない学生なのかと思っちゃったけど、ただ何も持たずに外に出てただけだったみたいね。彗先輩っぽい……)
店に入ると、母と昨日もいた常連さんがすぐに話しかけてくる。
母「ねえ! あの子、昨日の子だよね? お金たくさん払ってたみたいだけど大丈夫なの?」
奈子「あの人、昨日はたまたま何も持ってなかっただけみたい。昨日のオムライスの分も払ってくれたよ」
常連男「なんだ。そうだったのか〜。それにしても、イケメンの友達はイケメンなんだな」
常連女「本当に目の保養だったわ〜」
奈子(あ。そういえば、学校では話しかけないでくださいって言うの忘れちゃったな。……まぁ、学年も違うし会わないように気をつければいっか)
○次の日。学校の廊下。
移動教室のため、教科書を持って瑠美と歩いていた奈子。
たまたま廊下を歩いていた王子3人組とバッタリ会う。
湊斗「あっ、ネコちゃんだ〜! 昨日はどうもっ」
律之進「移動教室か?」
彗「……ノート落ちそうになってる」
王子3人から声をかけられている奈子を、隣にいる瑠美は神を見るような目で見つめてきた。
廊下にいる先輩女子や、教室から顔を出して王子を見ていた先輩女子たちは、昨日よりさらに激しい憎悪の目で奈子を見ている。
奈子(あれ……? 私の高校生活、さらにピンチ……?)
半泣き状態のまま固まる奈子。