麗しの年上社長は、私にだけ貪欲すぎる
(……帰りたい)
パーティー会場に来てものの数十分で、京助はそう思っていた。
日本に着いて早々、気が滅入りそうだった。
「京助さんは、Classicalの社長さんだとお聞きしました」
「Classicalって、あの人気老舗ホテルの?」
「私、お父様に連れてってもらったことがあります。素晴らしいホテルでした」
女性たちの言葉を聞き流し、京助は淡々とグラスの中身を空にしていく。
「すごいわ」と、たいして思ってもいないだろうに、名乗られた名前も忘れたどこかの令嬢が、また一人喋る。
厚化粧に、頭痛がするようなキツい香水の香り。極め付けは、甘ったるく囁く言葉の数々。嘘で包まれた言葉だと言うことに、自分が気づかないとでも思っているのだろうか。だとしたら、彼女たちは見た目だけの知性のない、浅はかな人間だと言うことだろう。
京助はそんな風にして、自分に言い寄る女性たちを見ていた。
(仕事に繋がる大事な場だと言うことは分かっているけど、やっぱりこういう場は好きじゃない。特に、今日みたくパートナー探しを目的とした社交の場は)
今すぐにでも帰りの車を呼ぶ行動にでたい。しかし、主催者である祖父の顔も立てなければならない。そう思い、京助はこの場にとどまっていた。
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