麗しの年上社長は、私にだけ貪欲すぎる
踵を返し、建物の裏手に回る。外に出るとフラワーアーチの一本道を進んだ。道を抜けると、そこは色とりどりの花が咲き誇る、気品を感じさせるエレガントな庭園だった。
窓ガラス越しに会場の中を覗く。
一目でいいのだ。ほんの少しだけ__。
だが、もうそこに彼の姿はなかった。奈緒はガックリと肩を落とした。
(……やっぱり、そんな上手くはいかないよね……)
カゼボに置かれた椅子に座り、一人、夜空を見上げる。満天のとはいかないが、星が煌めいていた。
(星はこんなに輝いているのに)
届くはずもないと知っている。自分の願いなど、今までいくつも消え去った。期待すればするだけ後が苦しいから、するだけ無駄だと、奈緒は思ってきた。
それでも、このくらいの願いくらいは聞いてほしかった。
「……帰ろう」
そうして、重い腰を上げ、諦めて帰ろうとした時だった。
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