麗しの年上社長は、私にだけ貪欲すぎる
第一章

運命の歯車

ホテルClassical(クラシカル)は、大手ホテル企業、新田産業が経営するホテルの一つ。人種、年齢、性別問わず、あらゆるお客様に快適な日々を過ごしてもらうことを理念に、日本で一番の人気を誇り、その歴史は百年を超える老舗ホテル。
如月奈緒(きさらぎ なお)は、このホテルの客室係として働く二十六歳。大学を卒業後、新卒で入社し、今年で四年目になる。
ロッカールームで制服に着替えると、会議室に移動する。Classicalでは、毎朝始業ミーティングが行われる。
各部門、マネージャーが業務連絡をしていく。
奈緒が働く宿泊部門の仕事は、主にお客様が宿泊する部屋の掃除がメインで、表立って働くことはないが、ホテルの評価に関わる大切な役割を担っている。言わば、縁の下の力持ち。他にも、お客様の荷物を預かり部屋まで運搬したり、部屋で食事をするお客様にルームサービスを届けたりと、お客様の気持ちを汲み通り、要望に応えるのが仕事で、ホテル従業員の中で、一番お客様に近く寄り添う存在。
「__最後に。来週になりますが、我がホテルの代表取締役がご帰国されます」
代表取締役。支配人のその言葉に、女性社員たちがひっそりと色めき立つ。
新田京助(にった きょうすけ)新田産業現会長の孫で、次期会長。日本語、英語、中国語、ドイツ語、フランス語の五カ国後を話すペンタリンガルで、その天才的な頭脳を駆使し、今までいくつもの商談を成功させ、このホテルを成功に導いた男。メディア嫌いな彼は、テレビ出演や雑誌の取材に応じることはなく、その姿は謎に包まれている。
噂では、ものすごく、容姿が綺麗らしい。それは、同性すらも虜にしてしまうほどに。
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