麗しの年上社長は、私にだけ貪欲すぎる
男性は、奈緒と同じように夜空を見上げた。
色素の薄い髪に、それに合わせたような茶色い虹彩。長く濃い睫毛に、シャープなフェイスライン。少し冷たさを感じる顔立ちだが、それが彼の美しさを際立たせていた。欠点のないその容姿は、近くで見ると圧倒されるほどの美しさだった。
美しい横顔を見つめていると、不意に男性がこちらを向く。心臓が波打つように大きく飛び跳ねた。恥ずかしくてどうにかなってしまいそうだったが、不思議と目が逸らせなかった。
「頬が赤いけど、熱でもあるんじゃないですか?」
「えっ……?」
頬に触れると、確かに熱かった。
(あっ……もしかして、それでさっきも……)
手を伸ばしてきた男性が頭に浮かぶ。
(……優しい人だな。私なんかのことを気にかけてくれるなんて)
奈緒は笑ってみせた。
「ありがとうございます。大丈夫ですよ」
すぐに居なくなるのかと思ったが、男性はそのまま居続けた。
長い沈黙の中、一向に戻る気配のない男性。これ以上、この状況が続けば、本当に心臓がどうにかなってしまいそうで、奈緒はたまらず口を開いた。
「あ、あの……」
「なんですか?」
「パーティー、戻られなくていいんですか?」
「ええ、いいんです。ここにいる方がいいので」
真っ直ぐに見つめられて、そう言われ、ドキッとした。
(勘違いしちゃダメ。別に私がいることとは、関係ないんだから)
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