麗しの年上社長は、私にだけ貪欲すぎる
持っていた裁縫道具が床に落ちる。
最上階にあるタワーマンションの一室に入った途端、息も出来ないくらいにキスをされ、奈緒の腰は砕けそうになった。
壁にもたれるようにずり落ちると、男性の力強い腕が奈緒の腰を支えた。
熱い吐息が、互いの頬を掠める。
「すいません。いきなりでしたね」
男性は奈緒を抱き抱えると、ベッドの上に座らせ、隣に座った。
そして、しばらく奈緒の呼吸が落ち着くのを待つと、口を開いた。
「無理やりはしたくない。君の気持ちを聞かせてください」
真摯な男性の態度に、奈緒は俯かせていた顔を上げる。
「……はじめてでも、いいですか?」
奈緒がそう言うと、男性はそっと奈緒の手を握った。
また、心臓がぎゅっとなった。
「君が僕でいいと言ってくれるなら」
「あなたがいいです……」
どちらともなく唇が重なる。
さっきとは打って変わって、奈緒のペースに合わせてくれる、ゆっくりと、優しいキスだった。
「そうだ、僕の名前は」
「京助さん……」
奈緒がそう言ったのを聞いて、京助は嬉しそうに微笑んだ。そして、後頭部に腕が回されると、奈緒の体はベットに倒れた。
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