麗しの年上社長は、私にだけ貪欲すぎる
翌朝、目が覚めた奈緒の隣には、静かに寝息を立てて眠る京助がいた。
(……夢じゃないんだ)
体を重ねたことを思い出せば、自分の意識とは関係なく火照る身体。京助が自分の中にいたということは、この体が教えてくれている。

__君を抱きたい。

まさか、偶然行ったパーティーでこんなことになるなんて、想像もしていなかった。
顔にかかった京助の前髪を手で梳かす。彫刻のように美しい京助の顔は、遮光カーテンから入り込む朝日に照らされて、宝石のようにキラキラと輝いていた。
「……」
(何。これ……)
苦しくなって、奈緒は自分の胸に手を当てた。
昨日とは違う。愛しくて、切ない。そして、なぜか怖かった。この気持ちは、一体なんなんだろうか。
早くここを去らなければ。奈緒は自分の身を案じるように、唐突にそう思った。
愛しく感じてしまう寝顔を見る。
「……一緒の思い出にします」
そう言い、最後にその唇に、触れるだけのキスをする。
さっと衣類を着て、足早に広いリビングを抜けると廊下を進み、そーっと玄関のドアを開けた。
「……さようなら」
振り向きそう言うと、奈緒は胸が苦しくなる想いを抱えたまま、部屋を後にした。
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