麗しの年上社長は、私にだけ貪欲すぎる
「恋人ができた」
「……は?」
真面目に答える京助に、花井は拍子抜けした。
「恋人って……誰、どんな方ですか」
「如月奈緒さん。このホテルの客室係として働いている」
「はっ……!? このホテルで働いている!? いつから、なんでそうなったんですか!」
仰天した花井は、らしくなく大声を出し、京助に詰め寄る。
「昨日のパーティーで出会って、さっき付き合った」
「さっきって……」
すると、花井は希望に満ちた顔で、ハッとした。
「ということは、如月さんはどこかのご令嬢ですか?」
花井が喜んだのも束の間、京助は「さあ?」と言うだけだった。
「そんなこと、重要じゃないよ」
飾り気がなく、控えめ。だが、どことなく芯が強く、凛としている。京助が奈緒にもった印象はそんな感じだった。
「それに、ふんわりと蕾が開いたように笑った顔が、可愛いかったんだよな……」
恥じらいもなくさらりと言った京助に、花井は開いた口が塞がらなかった。
今、その椅子に座っている人物は、本当にあの新田京助なのだろうか。実は本体が別のところにいるアンドロイドなのではと、花井は疑いの目で京助を見ていた。
なぜなら、新田京助は、こんな風に他人に興味を持つような男ではなかったのだ。
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