麗しの年上社長は、私にだけ貪欲すぎる
そもそも、京助は物や人に執着するような人間ではなかった。
Classicalの社長になったのも、働くのも、後継ぎだったから。恋愛に関しては、過去に付き合った女性はいたが、それも、年相応の孫に恋人がいない祖父が心配して紹介してきたからだ。

__私のこと、好きじゃないでしょ。

そう言われたのは、一人や二人ではない。
愛が芽生えるかもしれないと思って付き合ってみたが、愛が芽生えるどころか、自分の虚さを痛感するだけだった。
何に対しても、興味を持てなかった。ずっと無関心だった。
人を想うことも、想われることも不毛。そんな自分は、一生一人で生きていくしかないのだろうかと、諦めていた。だが、心のどこかでは希望を捨てなかった。こんな自分にも、いつか逢うべくして会える人がいるかもしれないと。
そして、奈緒に出会い__やっとだ。京助はそう思った。
やっと、出逢うべき人に巡り会えた。
「彼女は、僕の全てだ」
揺るがぬ意志の強さを感じさせる瞳で、じっと花井を見据える京助。
花井は驚きを隠せなかった。
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