麗しの年上社長は、私にだけ貪欲すぎる
二十六年間。男性と付き合った経験は、奈緒にはない。こうして、料亭に連れてきてもらったことも、もちろんない。自分を好きだと言ってくれたのも、優しくしてくれたのも、気にかけてくれたのも、全部全部、京助が初めてだった。
「美味しい……」
料理を食べて、思わず顔が綻ぶ奈緒。ほっぺたが落ちそうになるなんて言葉があるが、まさにその通りだった。
「よかった。ここの料理はどれも美味しいですから、いっぱい食べて下さい」
奈緒が食べる姿を見ながら、京助の頬は緩んでいた。気恥ずかしくて、そんなに見ないでと言いたかったけど、言わなかった。
京助のその顔を見ていると、自分も幸せを感じていたから。
(京助さんといると、心が温かくなる。誰かと心を通わすことが、こんなにも幸せなことだなんて、知らなかった)
食事を終えると、京助の運転で、夜景が見える展望台に来た。ライトアップされたダイヤ型のモニュメントの中では、写真を撮る恋人たちがいる。
「僕たちも撮りますか?」
奈緒の視線の先を追って、京助は聞いてくる。
「えっ、そんな、いいですよ。私なんかと撮っても……」
「そう言わず、せっかくですから」
京助はさっと奈緒の手を取ると、列に並ぼうとする。
奈緒は京助に手を引かれるがまま、列に並んだ。
「楽しみですね」
モニュメントを見て、わくわくした様子の京助。
(あの夜に見た笑みとも、さっきの恥ずかしがった表情ともまた違って、無邪気な子供のような笑顔……)
無表情で何を考えているのか分からない。ホテルの社員たちは、彼をそんな風に言っていたが、奈緒の前にいる京助は、喜怒哀楽のある、とても人間らしい人だった。
「美味しい……」
料理を食べて、思わず顔が綻ぶ奈緒。ほっぺたが落ちそうになるなんて言葉があるが、まさにその通りだった。
「よかった。ここの料理はどれも美味しいですから、いっぱい食べて下さい」
奈緒が食べる姿を見ながら、京助の頬は緩んでいた。気恥ずかしくて、そんなに見ないでと言いたかったけど、言わなかった。
京助のその顔を見ていると、自分も幸せを感じていたから。
(京助さんといると、心が温かくなる。誰かと心を通わすことが、こんなにも幸せなことだなんて、知らなかった)
食事を終えると、京助の運転で、夜景が見える展望台に来た。ライトアップされたダイヤ型のモニュメントの中では、写真を撮る恋人たちがいる。
「僕たちも撮りますか?」
奈緒の視線の先を追って、京助は聞いてくる。
「えっ、そんな、いいですよ。私なんかと撮っても……」
「そう言わず、せっかくですから」
京助はさっと奈緒の手を取ると、列に並ぼうとする。
奈緒は京助に手を引かれるがまま、列に並んだ。
「楽しみですね」
モニュメントを見て、わくわくした様子の京助。
(あの夜に見た笑みとも、さっきの恥ずかしがった表情ともまた違って、無邪気な子供のような笑顔……)
無表情で何を考えているのか分からない。ホテルの社員たちは、彼をそんな風に言っていたが、奈緒の前にいる京助は、喜怒哀楽のある、とても人間らしい人だった。