麗しの年上社長は、私にだけ貪欲すぎる
握った拳に、汗が滲む。
奈緒が一番恐れていたこと。それが、京助との関係を美玲に知られることだ。そもそも、美玲はあのパーティーで京助に好意を抱いていた。それは奈緒も知っている。美玲は京助との関係を進展させようとしていたに違いない。それなのに、奈緒が京助と親しくしているなど、あってはならないことだ。
「ねえ、なんで?」
「……」
「っ……黙ってないで何とか言いなさいよ……!!」
テーブルを叩かれ、奈緒は体を萎縮させた。
店の店員が、何事かとこちらへ来るが、美玲がお得意の営業スマイルを浮かべ、何でもないと言う。店員は心配そうに奈緒を一瞥したが、美玲の無言の圧で、席を離れた。
(本当のことを言えば、美玲姉さんは激怒する。何をされるか分からない。……それでもっ……)
拳をギュッと握る。
「……付き合ってるから」
「は?……」
意を決し、顔を上げ美玲を見据える。
「私、京助さんと付き合ってるから……!」
奈緒が後先考えず発言したのは初めてだった。
自分がどうなってしまうかを考える前に、京助を失う方が怖かった。
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