麗しの年上社長は、私にだけ貪欲すぎる

__アメリカ、ニューヨーク。

京助が宿泊先のプラザホテルを出ると、一台の日本製の高級車が停まっていた。
「おはようございます」
京助に気づいた秘書の花井(はない)が、言いながら軽く会釈をすると、後部座席のドアを開ける。
京助は無言のまま、後部座席に乗り込んだ。
「予定通り、このまま空港に向かってよろしいでしょうか?」
運転席に座った花井が、ミラー越しにこちらを見て問う。
京助が頷くと、車がゆっくりと動き出す。
京助はシートに深く背を預けた。
「流石の社長もお疲れのようですね」
「僕も人間だ。数週間に渡って、母国語じゃない言語で討論してみればこうなるよ」
「ですが、その甲斐あって、ニューヨークのホテル王と契約を結ぶことが出来ました。新田産業は更に飛躍していくでしょう」
前向きな花井をよそに、京助の表情は浮かない。
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