麗しの年上社長は、私にだけ貪欲すぎる
覚悟を決めた奈緒。しかし、美玲はプッと吹き出し、嘲笑いはじめた。
「冗談やめてよ。あんたと付き合ってくれる男なんて、相当な物好きしかいないでしょ」
馬鹿馬鹿しいとを仰ぐ美玲。
「う、嘘じゃないから……!」
奈緒が強気にそう言うと、美玲の顔からスッと笑みが消えた。
「愚図でブスで地味で、掃除と洗濯しか出来ないような何の取り柄もないあんたを、京助さんが選ぶはずがないでしょ……!!」
ヒステリックに捲し立てる美玲。肩で大きく息をしていた。
(美玲姉さんの言っていることは正しい。私は京助さんには不釣り合いだ。それでも……譲りたくない。京助さんだけは、何があっても、譲れない)
「私は、京助さんのことが__」
「忘れたわけじゃないよね?」
奈緒がハッキリと意思表示をしようする前に、美玲が制して話し出す。
「誰のせいで、あんたの両親は死んだと思ってるの……?」
その言葉に、奈緒の頭には、走馬灯のように、あの出来事が呼び起こされる。

そう、あの日は雨が降っていた。

__早く帰ってきてね。

そう言い、奈緒は自分の誕生日ケーキを買いに行った両親を送り出した。だが、いつになっても二人は帰ってこなかった。
二人は、ケーキを買いに行ったその帰りに、事故に遭い亡くなったのだ。
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