麗しの年上社長は、私にだけ貪欲すぎる
美玲は立ち上がり、奈緒の横に来ると、耳元で囁くように言う。
「あんたのせいでしょ?」
あれは事故だった。そうやって、区切りをつけ生きようとしたこともあった。だが、自分がケーキなど欲しいと言わなければ、両親は生きていたのかもしれない。そう思うと、奈緒は割り切れなかった。
「そんなあんたが幸せになるなんて、許されるわけがないでしょ? あんたは周りを不幸にするの! 幸せになんてなれやしないの!」
胸に矢を刺すように、美玲は言い放つ。
奈緒の心は悲鳴を上げた。
「……どうして……っ」
声を震わせ、涙腺に溜まった涙を流さないように、必死に我慢しながら、美玲を見上げた。
「どうしてそんな酷いことを言うの……?」
自分が美玲に何をしたというのだろうか。これまでの人生、奈緒は出来るだけ美玲を優先してきた。美玲が望む自分で居続けてきた。それなのに、なぜここまでの仕打ちを受けないといけないのか。
「……どうして? あんたが嫌いだからに決まってるでしょ」
蔑みの笑みすらも浮かべず、憎そうに奈緒を見下ろし、冷たく言い放った美玲。
(ダメ……泣いたら負ける。泣くな、自分)
「っ……」
奈緒は握った拳を、更に握りしめた。
苦しくて、何も言い返せない奈緒。
くすくすと卑劣な笑い声が、すぐ耳元で聞こえる気がした。
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