麗しの年上社長は、私にだけ貪欲すぎる
「もっと自分に見合った方と結婚して下さい」
花井のその言葉に、京助の眼光が鋭く光った。
「僕に見合ったってどんな人? お前もお祖父様も、家柄が家柄がと言うけど、そんなものがあっても、人を想いやる心を持ってない人はいるし、僕の外見や地位だけにしか目を向けない人だっている。そんな人であっても、家柄さえ良ければ結婚しろと言うの?」
強い物言い。
怒りを露わにした京助に、花井はたじろいだ。
「いくら花井でも、彼女のことを悪く言うのは許さない」
付き合いは長いが、京助が怒るところを、花井は初めて見たのだ。
「も、申し訳ありません……」
花井は頭を下げざる他なかった。
「前にも言ったけど、僕の気持ちは変わらない。僕には彼女だけだ。諦める選択肢はないよ」
(何があっても、手放さない。手放せるはずがない)
そこで、胸ポケットに入れてあった携帯が鳴る。知らない宛先からのメールだった。
メールを読み終えると、京助は腰を上げた。
「社長、どちらに?」
「所用で席を外す」
足早に歩きながらそう言う京助。
「車を回しましょうか?」
「いや、車は必要ない」
オフィスを出た京助は、ホテルのラウンジへ向かった。
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