麗しの年上社長は、私にだけ貪欲すぎる
「奈緒は小さい頃から私に憧れて、いつも私の真似ばかりするんです。酷い時は、私の彼氏を取ろうとしたこともありました」
正面に座り、聞いてもいない勘違い話をペラペラと話す美玲に、京助は内心うんざりしていた。
(おおよそ、僕の連絡先は知り合いの伝手でも頼って、聞き出したんだろうな)
奈緒のことで話があるとメールを受け、一応にも家族だからと、京助は渋々、指定されたラウンジに来ていたが、すでに不快だった。
「きっと、私が羨ましかったのでしょう。あの子は、何も持たざぬ者ですから」
可哀想にと、心苦しそうにする美玲。本当は何も思っていないだろうに。
(違う……彼女が羨ましがられているんだ)
一流大学を成績優秀で卒業し、大企業である新田産業が経営するホテルに就職した奈緒。真面目で働き者の彼女は、上司からの信頼も厚く、お客様からの人気も高い。
外見が美しい自分の方が勝っているはずなのに、どうして彼女ばかりなのかと、美玲は奈緒に劣等感を抱いているのだろう。
(美しさなどまやかしでしかない。どれだけ外見を取り繕ったり、変えたりしたとしても、人の本質は変わらない。この女の本質も、醜いままだ)
「京助さんも、色々と苦労されていますよね? あんな子が恋人だなんて……。きっと、可哀想に思ったんですよね? 京助さんお優しいから」
言いながら、美玲はテーブルの上に置かれていた京助の手の上に、自分の手を重ねる。しっとりとした感触が気持ち悪かった。
京助はさっと手を引いた。
避けられても、美玲は笑みを崩さない。
(嫌な女。彼女と血縁関係があるなんて信じがたい)
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