麗しの年上社長は、私にだけ貪欲すぎる
「私は、京助さんのお気持ちが分かりますよ。あの子は、不運な子ですから」
「……不運?」
顔を顰めた京助に、美玲は頷き話を続ける。
「あの子の両親は、あの子が八歳の時に、交通事故で亡くなりました」
「ええ、存じております」
(それが不運な子だと言う理由? 確かに、ご両親を亡くしたことは気の毒だが、でもだからと言って、彼女を不幸扱いしないでほしい)
「では……あの子のせいだということは?」
「え?……」
京助の反応に、美玲は僅かに目を細めた。
「あの日、誕生日だった奈緒は、誕生日ケーキが欲しいと我儘を言ったそうなんです。ケーキを買いに行ったその帰り、お二人は亡くなられて……」
(……そうだったのか。そんなこととなれば、優しい彼女のことだ。自分を責めるだろう……)
「あの子も辛いでしょう。自分のせいで、両親が死んでしまったんですから」
その言葉に、京助は大きく反応した。
聞き捨てならなかった。
「……それ、言ったんですか」
「え?」
眉間に皺を寄せる京助を見て、ポカーンとした顔をする美玲。命を思いやらず、ここまで奈緒の気持ちをぞんざいに扱っといて、何の罪悪感も抱いていない。
「彼女に、両親が死んだのはお前のせいだと、言ったんですか?」
無意識に、言葉に力がこもった。
「えっ、や……私は……」
怒りを滲ませる京助に、余裕のあった美玲の態度は一変。焦り出した。
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