麗しの年上社長は、私にだけ貪欲すぎる
京助は全てを理解した。奈緒を苦しめる元凶は、この女にあるのだと。
「あなたは__」
「あら……」
そう言い、京助の言葉を制し、視線を逸らす美玲。わざと他に注意を引こうとしているのかと思ったが、美玲の顔つきを見て、そうではないと思った。
美玲が視線を向けた先を見ると、そこには制服姿の奈緒が立っていた。
京助と美玲を見て、動揺している。
京助はハッとした。
(油断した。客室係の彼女は、チェックインが迫ったこの時間、ラウンジに来ることはないと思っていたけど、従姉妹からの呼び出しとなれば、そうはいかない。この女は、これを狙ったんだ)
京助が自分の迂闊さに悔いていると、この展開を待ってましたと言わんばかりに、美玲は彼女に向かって「奈緒」っと、笑顔で手を振る。
奈緒は後ずさると、そのまま京助たちに背を向けて走り去ってしまう。
考えるより先に行動していた。
「京助さん?」
美玲の声を無視し、京助は椅子から立ち上がると、急いで奈緒の後を追った。
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