麗しの年上社長は、私にだけ貪欲すぎる
「僕が望むことはただ一つ。あなた方が今後一歳、奈緒さんに関わらないことです。もし、関われば……」
京助は隣にいた奈緒の両耳を塞ぎ、背中を丸め、ドスの利いた声で、三人に呟いた。
「僕はあなたたちに何をするか分からない」
何を言っているのか、奈緒には分からなかったが、美玲たちは震えていた。
まるで、今までの自分のように。
「ご、冗談……ですよね……?」
「いいえ、本気です。その写真のことをばら撒くのも、僕にとっては造作も無い」
美玲は怯えたように京助を見ていた。その写真のことが周りに知られれば、一貫の終わりのようだった。
「っ……わ、私は、奈緒より綺麗で、可愛くて、愛されるのは当然でしょ? それなのに、どうして奈緒なのよ。なんでみんなっ……奈緒、奈緒、奈緒って……こんな女のどこがいいのよっ……!!」
狂ったように叫ぶ美玲。その姿は、あまりにも哀れだった。
「ねえ……? そうでしょ? なんで、どうして……京助さん……」
縋るように京助の腕を掴む美玲。
京助は強くその手を払った。
「その呼び方もやめてもらいたい。僕を名前で呼んでいいのは、家族か恋人だけ。あなたはそのどちらでもないし、あなたのような人と僕がどうにかなるなんて、断じてありえない」
吐き捨てるように美玲にそう言った京助。
美玲は気が抜けたように、その場に崩れるように座り込んでしまった。
こんな展開、誰が予想していただろうか。
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