麗しの年上社長は、私にだけ貪欲すぎる
一歩、京助が歩み寄り、影が重なるように、二人の距離が近づく。
「僕は君以外、愛せない。今日は、それを伝えたかったんです」
ビー玉の瞳が熱を帯び、情熱的に燃えている。その瞳に囚われたように、奈緒はじっと京助を見つめた。
(彼が好きだ。それはもう、どうしようもないくらいに……)
京助と生きる人生以外、奈緒にだってありえない。京助は奈緒の世界そのものなのだ。
京助の全てが、奈緒であるように。
「一生をかけて、あなたを守ります」
溢れんばかりの幸せが、胸を締め付ける。
京助に手を引かれると、今度こそ歩き出す。二人がゆく道を塞ぐものはいない。その場にいる誰もが、自然と二人のために道をあけた。
いつの間には、会場に美玲たちの姿はなかった。
少し離れたところでは、花井が立っている。その隣には、杖をついた老紳士がいた。
二人は身を寄せ合うと、招待客たちに見守られながら、熱い眼差しを向け合い、音楽が続く限りダンスを楽しんだ。
いつか離れる時がきて、京助との日々が過ぎ去っても、彼と生きられて本当に幸せだった。そう思える日がくることを、この時の奈緒はまだ知らない。

__それを知るのは、京助と結婚し、子供を産んだ後のうんと先の話。
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