悪役令嬢らしく全てを奪われ、断罪されたはずなのになぜかヤンデレ従者に溺愛されてます

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「お、お姉様は?お姉様はどこにいらっしゃるの?あなたがここにいるってことはお姉様が助けに来てくださったのよね」
お姉様は国外追放になっているからオスファルトの手から運よく逃げられたはず。
あの時、お姉様はイスファーンと一緒に会場を出て行って、そのまま二人で行方知れずになった。二人は一緒にいると私は思っていた。
お姉様はエーメント殿下と私のことを嫌悪しながら自分は従者であるイスファーンと恋仲だったのだ。
自分のことを棚に上げて責めるような人としてできた人ではないけど、家族である私に多少の愛情はあるはず。
オスファルトが攻めてきたのを知って助けに来てくれたんだ。
「くすっ。ふふふ。あはははは」
地下牢にイスファーンの笑い声が響き渡る。
「何がおかしいのっ!」
彼は人をイラつかせる天才ね。
この状況が何も分かっていないのかしら。
早くしないとオスファルトの人が来てしまう。そうなると‥‥‥。
私は床に転がる三人の首に視線を向けた。
彼らに起こったことが私にも起こる。
怖くてたまらない。
お姉様はどうしてこんなイカレタ人を助けに寄こしたのよ。
お姉様本人か、もっとまともな人を寄こしてくれたら良かったのに。
「どうしてイリスがあんたみたいなクズを助けなければならない?イリスは誰からも愛されなかった。母親から愛されているとでも思った?目の前で見てたのに?イリスが母親から暴力を受けているのを」
暴力?
違う。あれは躾よ。お父様が言っていた。
お姉様はいつか王妃にならなくてはいけないから厳しく躾けないといけないって。
「躾だと思った?あは。どうして分かったのかって顔をしてる。分かるよ。あんたの考えることなんて。だってあんたはいつも全部、自分の都合の良いようにしか考えないじゃないか。エーメントと愛し合った時、イリスはエーメントのことを愛していないから大丈夫だと自分を正当化させた。イリスがエーメントを愛していないと言ったか?」
「‥…」
「言ったか?」
「言ってないわ。でも」
「でもイリスの言動からそう推測した?」
さっき言ったようにイスファーンは本当に私の心が読めるみたい。言いたいことを全部、先読みして先に言ってくる。
「だってその方が都合が良かったから。それで自分だけは綺麗な場所にいるつもり?自分だけはお綺麗な存在でいるつもり?あんたはヘドロの溜まった池みたいに汚いよ」
「私の勘違いでお姉様を傷つけたのなら謝るわ。でも真相を確かめるにしても謝るにしてもこのままではできない。早くオスファルトの人間に見つかる前に私を助けて。分かっているでしょう。ルラーンはオスファルトに侵略されたのよ。こんなところで呑気に話している暇はない」
「あんたは何も分かっていない。またお得意のご自分に都合の良い解釈が始まった。本当に嫌気が差すよ。お前を助ける必要なんてない。助ける為に来たわけじゃない」
「私を見捨てる気?お母様もお父様も死んだ今、お姉様の家族は私だ、ぎゃあ」
イスファーンは私の髪を鷲掴みして引っ張った。
髪の毛が何十本もむしられて、頭皮から血が出た。
「イリスの家族は俺だけだ。俺だけで良い。お前なんか要らない。ルラーンも要らない。イリスを苦しめるだけの国も人間も要らない。イリスに必要なのは俺だけだ。俺だけがいればいい」
「まさか」
にやりとイスファーンは笑った。
「この人でなし!悪魔!ルラーンの人間のくせにオスファルトに手を貸すなんて、この売国奴、ぐふっ」
イスファーンは私の腹部を殴った。
「また始まった。本当好きだよね。ある意味天才だよ。自分の都合のいいように解釈しないでくれる。俺はルラーンの人間じゃない。オスファルト人だ」
「!?」
「さぁ、始めようか。イリスに与えた以上の痛みと苦しみをあんたにも与えてあげる。大丈夫。あんただけじゃない。あんたの両親もエーメントもみんな味わって死んだんだ。あは。良かったね。みんなとお揃いだよ」
助けて、お姉様。
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