好きを極めた乙女の駆け引き
御園唯、今日から高校3年生。風紀委員長をしてます。
常に生徒の模範となる行動を心がけ、時には風紀が乱れた人に厳しく接することもあります。
羨望を背負い、たまに汚れ役を買って出る、そんなお仕事です。
わたしには、天敵とも呼べる男がいます。
トンビのような男です。低空飛行で目を光らせ、隙あらば食べものを取っていく、あのトンビです。
「御園さん、おはようございます。春休み期間中の4月1日に登校とは、仕事熱心ですね」
上から挨拶をしてくる彼。そう、彼こそトンビです。
わたしと同じ高3の、しかも同じクラスの男です。
2年から3年にあがるとき、うちの高校ではクラス替えが行われないので、また1年同じクラスで過ごさなければいけないかと思うと、憂鬱です。
嘘です、めっちゃ幸せ!
なんでそんなかっこいいんだよ。今日も今日とて美だよ。圧倒的、美だよ。
もはや絵画かよ。絵画の世界から来たのですか?
高い身長、すらりとした体型、手入れの行き届いたつややかな肌、触ってよしよししたくなるきれいな茶髪。
入学早々、わたしの心をいとも簡単に奪っていったトンビは、とにかくかっこいい。語彙力がなくなるくらいかっこいい。
いいじゃん、語彙力がなくなったって。
美の前では言葉なんて無力なものよ。
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