好きを極めた乙女の駆け引き
「ちょ、なにまた寝ようとしてるの!」
起こした体をふたたび寝かせた安心院くん。わたしはすぐさま駆け寄って、体を起こそうと腕を引っ張る。
「勘弁して。俺、今日、午前登校なんだよ。朝早かったんだよ」
「ふつうに学校がある日よりは遅いでしょ、起きろ」
「そうそう。俺、ひさびさに9時台の番組みたわ。可愛いアナウンサーがいたよ。なんて名前だろ」
「知らんがな」
必死に引っ張るけど、だらんとした人間の体を起こすのは、案外、重労働だ。
「こじんまりしててさ、犬っぽかった。男にしては低身長で」
男かよ。なんとなくほっとしたような……と、思ったときだった。
ガシャン――。
なにかが閉まるような音がした。
「……ガシャン?」
「なんの音?」
目を見合わせたあと、ふたりして入り口のほうを見た。……案の定だった。
「きゃー! 嘘でしょ?」
駆け寄って、ドアをガタガタとゆらす。けれど、ゆれはするけど、開いてくれない。