好きを極めた乙女の駆け引き
「まじかよー。閉じ込められた?」
振り向くと、安心院くんはその場にとどまったまま。全然焦った形跡がない。
「閉じ込められたよ。びっくりするほど、漫画的展開で閉じ込められたよ」
「俺たち嫌われてんのかなー。ひどいいじめを考えるやつが、この学校にいたなんて。生きて出られたら、会長権限で退学させよう」
「その権限発動する前にわたしが取り締まる。え、てか、これ故意なの?」
「だって、あんなに喋ってたのに、気づかないで閉めるなんておかしいでしょ」
たしかに。
「それに、別に焦る必要なくね。現代に猫型ロボットはいないけど、便利な便利なスマホくんはいるんだから」
「あ、そっか。じゃあ電話し……ダメ!」
「ん?」
安心院くんがポケットからスマホを取り出したところで、止めに入った。
「だって、考えてみて。ここ、元密会部屋だよ? こんなところで、わたしと安心院くんが一緒にいるところを見られたら……」
「あー……ね。事後だと思われんね」
「だから濁せって! とにかく、そんなの絶対ダメ」
「じゃあどうすんの。壁ぶっこわす? 窓やぶる? 地下道掘ってもいいよ」
「真剣に考えてくれない?」
「つうか、御園が隠れとけばいいだけだろ。人呼んで開いて、隙みて出れば」
「え? あ、そっか」
ナイスアイディアだ、と思ったのも束の間だった。
「……あ、無理だわ」
スマホの画面を見て、安心院くんがつぶやいた。