その執着は、花をも酔わす 〜別れた御曹司に迫られて〜


なんとか彼を振り払って帰っては来たけど……。
強引なところは変わってないけど、昔よりもずっと凛々しくて、大人の男性って感じになってた。
思わず唇に指で触れる。

『君を見つけ出したら、今度こそ手に入れて離さないと決めていたんだ。相手がいるなら奪うまでだ』

自分から手放したくせに、勝手すぎる。
「……」
気づいたら、頬を生暖かいものが伝っていた。
拭っても拭っても溢れてくる。
喉の奥が熱くて苦しい。

「……ふっ——っ」

二度と会いたくなかったのに。

『花音』

二度と呼ばれないと思っていたのに。




翌日曜日、十七時三十分。
私は開店直後でまだお客のいないツワモノ家を訪ねた。
「こんばんはー……」
なんとなく、恐る恐る覗くように顔を出す。
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