その執着は、花をも酔わす 〜別れた御曹司に迫られて〜
翌日。
『うちのビールって碇ビールに変えられないの?』
『急にどうした?』
店の開店準備中に、私が急に言い出したから父は驚いていた。
『飲み比べたら、碇の方がおいしい気がしたの』
『だけど仕入れ値がなぁ……』
『おいしいお酒の方が注文が増えて、結果的に利益になるんじゃない?』
私の提案で、翌週から試しに碇も並行して扱うようになった。

『なんで碇も取り扱ってるわけ?』
例のごとく、鞘元さんが私に絡んでくる。
『うちのサービス向上のためなんじゃないですか?』
開店準備をしながら知らないフリをして無愛想に答える。
『それはルール違反だよね。花音ちゃんのために安くしてるんだから、お父さんに言ってくれないと』

私は思わず『はぁっ』と深いため息をついた。

『……ダサすぎ』
『え?』
『ルールとか言われても、誰も頼んでないし! 私なんかに媚びてないで、味で勝負できるもの持って来ればいいだけでしょ!?』
イラッとして思わず厳しい口調で言ってしまう。
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