その執着は、花をも酔わす 〜別れた御曹司に迫られて〜
「あの頃……『アルコール飲料の商品企画がしたい』と言っていたよな」

心臓がますます息苦しい音を鳴らす。

「なぜ企画職に就かなかった?」

「……」

無言の私に、彼が振り向く。

「……『なぜ』って、それをあなたが言うの?」
「え?」
「企画職で内定が出ていたのを……邪魔した張本人のくせに」
思わず声が震える。
「何の話だ?」
私の目からは悔し涙が溢れる寸前だ。
「企画どころか、アルコール業界から締め出したくせに! 私がやっと手に入れた大切な仕事まで都合良く取り上げておいて」
『なぜ』なんて、無神経にもほどかある。
「締め出した?」
彼の目が、見たことの無い動揺の色を見せた。
「もしかして、軽いイタズラくらいの気持ちでした? だから忘れられるんですね。ひとの夢を奪っておいて」
「花音、俺は——」
彼が何かを言おうとしたタイミングでエレベーターが目的の階に着いて、私たちは社長と秘書に戻った。

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