その執着は、花をも酔わす 〜別れた御曹司に迫られて〜
しばらく沈黙したまま私が困惑した表情をしていると、彼はまたため息をついた。
そして、視線をタブレットに戻す。
「これ」
彼が私に画面を見せる。
「『新商品企画コンペ』……?」
彼が頷く。
「うちの会社は、商品開発部とは別に社内の誰でも応募できる企画コンペを定期的に開催している」
さすが大企業。
「作りたい商品があるなら、これに応募してみるといい」
「え……」
「さっき、何か言いかけていただろ?」
聞かれてたんだ。でも……。
「何ですか? 七年前の罪滅ぼしのつもりですか?」
私の夢をめちゃくちゃにしたことが、こんなことで許されるはずがない。
「信じてもらえないかもしれないが——」
彼がまた私を見つめる。
「俺は、七年前の君の邪魔はしていない。そんなことになっていたとは知らなかったんだ」
「え……?」
「あの頃も言っていたはずだ、『君には企画のセンスがある。企画職を目指すといい』と」
たしかにこの人はそう言っていた。
だからこそ、邪魔をされたのが余計に悔しいと思っていた。

彼の言葉を信じていいのかわからず思わず顔を背けて、それからは彼の方を見られなくなってしまった。
だけどその車中ではずっと、見つめられていた気がする。

車の揺れと彼の視線の熱で、酩酊したような感覚に陥る。
心臓が、自分でもよくわからないリズムを刻んでいる。

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