その執着は、花をも酔わす 〜別れた御曹司に迫られて〜
だけど、彼にプロポーズされたことを父と母に伝えたら……
『よく考えた方がいい』
『どうして? 幸せにしてくれるって約束してくれたし、今だってすごく大事にしてくれてるよ?』
父も母も困った顔をしていた。
『いい? 花音。結婚というのは二人だけのことじゃないのよ。お父さんとお母さんが結婚する時でさえ、親族を巻き込んだ大きな出来事だったの。それを碇の御曹司と、だなんて。家柄があまりにも不釣り合いよ』
『お前が苦しむのが目に見えてるのに、首を縦には振れない』
『二人で頑張ればなんとかなるよ』
『花音!』

次の日、彼にそのことを伝えた。
『そうか、大事な一人娘だもんな。ご両親の気持ちもわかるよ』
そう言った彼が結婚を諦めてしまうのかと、私は表情を曇らせた。
『ゆっくり説得していこう。花音だって就職して、仕事に慣れてからの方がいいだろうし』
彼がそう言ってくれたから、私は満面の笑みを浮かべた。
『花音は企画の仕事を探すんだろ?』
『うん、そのつもり』
『碇を受けたらいいんじゃないか?』
『さすがにそれは……』

早く自立した大人になりたかったから、彼の力を借りるようなことはしたくなかった。
それでも、彼に出会って好きになったお酒に関わる仕事をして、将来は彼の役に立ちたいとも思っていた。

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