その執着は、花をも酔わす 〜別れた御曹司に迫られて〜
気づいたら、見覚えのあるモノトーンの部屋にいた。
彼は私をソファに座らせた。

「君は俺を憎んでいるんだろ?」
恐る恐る頷く。

「七年前、俺が君を置いてアメリカに行ったから?」
また頷く。

「それに……あなたが、パーティーに来なくて——」
この話は、辛くて息が詰まる。

「あなたのお母様にたくさん否定の言葉を浴びせられて」
あの日の言葉を思い出すと、どうしても泣かずには話せない。

「だけどあなたはいなくて」
彼は私の前に跪くようにして、顔を覗き込んだ。

「……パーティーの件は、母に騙されたんだ」
「え……」
彼の口から、初めてあの日のことを聞く。



あの日のパーティーは両親に紹介して、出席者からも公認の婚約者にしてもらうために君を招いた。
だけど、直前になって母が——
『お祖父様の従兄弟の方の体調が思わしくなくて、パーティーは再来週に延期になったのよ』
だが、実際には翌週への延期だった。
まさか嘘をつかれるなんて思いもしなかったから、簡単に信じてしまった。
そして君にも延期と伝えたが、母が手を回して翌週のパーティーに君だけを招待した。
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