その執着は、花をも酔わす 〜別れた御曹司に迫られて〜
酔いしれる
三週間後。
その夜は、碇グループの食品系の関連会社の二十周年記念パーティーが船上で開催されていた。

「お客様、招待状をご用意いただいて、あちらの受付で……」
「彼女は私の連れだ」
会場の入口付近に立っていた私の後ろから、彼が声をかける。
「成貴さん! 失礼しました」
予想外の人物に受付の男性が慌てていて、少し気の毒だ。
「本当に大丈夫か?」
小さく深呼吸をして彼の腕に手を添える。

今日の私は艶のあるネイビーの、タイトで大人っぽいドレスを身にまとい、髪をアップにしている。
「似合ってる」
彼に見つめられ、微笑まれる。

船内の会場はきらびやかなシャンデリアが吹き抜けの中央に輝き、その下には二階へと続く流線形の大きな階段があった。

そんな会場で、ゲストがみな真っ先に挨拶に向かい、一際注目を集めている人物がいる。

「わかりやすいな。あそこだ」
彼の言葉に、どうしても緊張して肩に力が入ってしまう。
七年振りに会う、最も会いたくない人物。
「成貴? 来ていたの」
彼のお母様、碇咲織(さおり)
彼女は碇家の長女として生まれ、夫を外から迎えた。

「珍しいじゃない、あなたがグループ会社のパーティーに出席するなん——」
上品ながらも迫力のある薄紫色の着物姿の彼女が、成貴さんの隣の私に気づく。
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