その執着は、花をも酔わす 〜別れた御曹司に迫られて〜
「七年経っても、何も変わっていないんですね」
彼女の目を見る。

「どういう意味?」
私が堂々と声をかけたことに、彼女は少し驚いている。

「私はこの七年でマナーを徹底的に学びました。美しい姿勢や所作も勉強して身につけました。あなたの前で背筋を伸ばして立つために」
この場で、何も恥じずにまっすぐ立っていられるだけの武器を身につけた。

「英語も……まだ流暢に話せるようにはなっていませんけど、聞き取ることはできるようになったんですよ」
〝vulgar〟は〝家柄が悪い〟〝卑しい〟そんな意味だ。
「七年前の私に英語がわからなかったのはむしろ幸運でした。こんなくだらない陰口で余計に傷つかなくて済んだんだから」

「あなたの家柄が悪いのは事実でしょう? 成貴と釣り合うなんて思わないでちょうだい。私はあなたを〝碇の嫁〟とは絶対に認めませんからね」
彼女は吐き捨てるように言う。

「あなたなんかに認めてもらわなくて結構です」
「なんか、ですって?」

「ええ。家柄なんていう運で手に入れたようなものにしがみついて、まるでアップデートできていないような人ですから」
できるだけ冷静な顔で笑ってみせる。
< 55 / 61 >

この作品をシェア

pagetop