雨降る夜に君を想う
初めての雨降る夜に
お店を出て、蓮くんが私に聞く。
「家どの辺?」
私は、
「ここからタクシーで10分かからないくらいで、歩いて20分くらいかな。」
と答える。私なんでわざわざ歩いて20分って言ったんだろ、なんかまるで2人で歩いて帰りたいみたいじゃん、、、
「じゃあ、天気も気持ちいし歩いて帰ろ!」
蓮くんがそう言ってくれた。蓮くんはいつも私が求めている返事をしてくれる。そんなことを考えてると、
「さっきはごめん。」
蓮くんが突然言う。
「え、何の話?」
「さっきハンカチ拾った時。俺ちょっと酔ってたわ。ごめん。」
そう言われ、胸がキュッと痛くなった。酔ってたからだったんだ、私じゃなくてもそう言うことしたのかな。そう思いながら、私は人妻なんだからここは全然気に留めていないように振る舞わなきゃ。そう思って、
「全然良いよ!酔ってたらそう言うこともあるよね。でも今日の4人すごい楽しかったし、ずっと仲良い友達でいたいから、もうそういうのは無しにしよ!」
そう、少し突き放したようにも聞こえる言葉を返す。
話題を変えたくて、
「てか、蓮くんあの後も結構飲んでたよね?大丈夫?」
そう言うと、
「正直俺結構酔ってる。でも怜さんも本当はお酒そんな強くないっしょ?酔ってるんじゃない?」
「正直私も結構酔ってる。」
そう言って笑い合った。心地のいい時間だった。
段差で少しよろけそうになった私の体を、蓮くんが支える。
「大丈夫?」
そう言う蓮くんの方に顔を向けて、大丈夫だよ、ありがと!そう言おうとすると、また蓮くんの顔が思ったより近くにあって、びっくりして言葉が出ない。
分厚い柔らかそうな唇。このままキスしちゃいたい、、そんなことを考えてると、ポツポツと、雨が降ってきてた。
「え、雨降ってきた!」
蓮くんが言う。蓮くんは傘買って来ようかと言ったけど、私は、
「走ったらうちまで後3分くらいだから、うちまで走ろ!」
そういって私たちは雨の中を2人で走った。
うちのマンションの玄関に着く。
ビッショビショになったお互いの姿を見てたら、お互い笑いが止まらなくなった。
「久しぶりに全速力した!楽しかったー!」
私がそう言うと蓮くんは、
「怜さん意外と幼い部分もあるんだ、なんか安心した。」
そう言って、私の顔に張り付いた濡れた横髪を取ってくれた。あ〜この人、色んな女にこういうことして、これまでたくさんの女落としてきたんだろうなぁ。そう思いつつも、顔に触れた蓮くんの長い指にドキドキしてしまった。私まんまとハマってるよ、、、ダメだ。そう思ったけど、こんな濡れたまま返すわけにはいかず、でも家にあげるのはダメだ、と思って、
「私家からタオル持ってくるね!ちょっとだけ待ってて!」
と言って、エレベーターに乗ろうとする。蓮くんはありがとう、と言いかけて大きなくしゃみをした。
え、このままじゃ蓮くん風邪ひいちゃうよな。温かいシャワー浴びたほうがいい。そう思い返し、エレベーターから一旦降りる。
「蓮くん風邪ひいちゃうからシャワー浴びて行ったほうがいいんじゃない?」
蓮くんはびっくりしたように、
「いいの?でも寒いからもし良いならそれはありがたい。」
というので、一緒にエレベーターに乗った。でも絶対触れ合ってはいけない。そう思って蓮くんに、
「私男の人家に呼ぶの、蓮くんが初めて!人妻が何してるのって感じだけど、この状況は仕方ないよね。一応ずっと1メートル離れとこ!」
自分にも、蓮くんにも、釘を刺すように冗談っぽく言った。
蓮くんは少し寂しそうな顔をしたけど、そうだね、変なことにならないようにそうしよ!そう言って一歩私から離れた。
「私が走ろって言ったからこんなことになっちゃってごめんね〜」
そう言うと、傘を買いにコンビニまで行ってたらどっちみち濡れてたし、楽しかったからナイス判断だったよ!と言ってくれた。
蓮くんがシャワーを浴びる音がする。何も起こるはずないのに、胸がドキドキする。
シャワーから出てきた蓮くんに、コップに入った水を渡す。
「ありがとう、喉乾いてた。」
そう言って、腰にバスタオルを巻いただけの姿で、濡れた髪をかきあげながら水を飲む。
服を着ている時にはわからなかったけど、思ったより筋肉がある。腹筋は割れていて、男らしい筋肉のついた腕に、速かった鼓動が一層速くなる。
「こんな姿でごめん、服濡れてるからさ、少し乾かしてもいい?」
私の目線に気がついたのか、そう言った。恥ずかしい。体見てたと思われちゃったかもしれない。
「そうだよね、乾くまで私のおっきめのトレーナー貸す!」
わたしは急いで寝室に行き、わたしがいつもオーバーサイズできているメンズのXLのトレーナーを探す。ズボンもダボダボのこれなら履けるかな。
祐介と身長同じくらいだろうから、祐介のを貸せばサイズ合うんだろうけど、それは祐介にも蓮くんにも悪いので、私の服を貸した。
意外とピッタリだったけど、ズボンが短かったようで、膝下半分くらいはズボンからはみ出ていて2人で笑った。
「蓮くん身長何センチ?」
「俺182だよ。怜さんは?」
高い。祐介より3センチくらい高い。
「私は155センチだよ、身長高いの羨ましいなー、蓮くんモデルとかは興味なかったの?」
私がそう聞くと、
「155センチかー可愛い。俺モデルとか絶対向いてないでしょ、多分恥ずくてカメラのレンズ直視できない。」
そう言うので私は声をあげて笑ってしまった。それはモデルとして致命的だね、そう言って2人で笑い合い、蓮くんが可愛いと言ったことはスルーした。
お風呂場で蓮くんの服を乾かす間に、私達は暇だったのでゲームをした。積み木のように色んな形のブロックを積み上げていく、テトラスだ。私はいつもやってるから結構強い。すると蓮くんが
「怜さん強すぎるって」
そう言って私の邪魔をしてくる。
「ねぇ蓮くんずるいよやめて〜!」
そう言って今度はわたしが蓮くんの邪魔をする。
本当に楽しかった。きっと人生で1番楽しかった。祐介の落ち着く居心地の良さとはまた違い、ワクワクするような楽しさだった。いつのまにか、私達の間に、1メートルの距離はなくなっていた。
そろそろ服乾いたかな、私はお風呂場に蓮くんの服を取りにいく。必要以上に乾燥してしまった服にまた2人で笑った。蓮くんといると時間があっという間だな。帰っちゃうのか、寂しいな、そう思ってしまった自分に、心の中でビンタする。一体何を考えているの私は!!
「下まで送るよ」
私はそう言ったけど、蓮くんは頑なに玄関まででいいと言ったので、お言葉に甘えて玄関まで送ることにした。
「ありがとう。本当に楽しかった。」
蓮くんがそう言う。こんなこと、もう一生ないんだろうな。そう思ったらなぜか、一生の別れみたいな気がして、急に切ない気持ちになった。蓮くんを抱きしめたい気持ちを抑えて、元気に答える。
「こちらこそありがとう。本当に楽しかった!また次は、打ち合わせかな?また4人でも遊ぼうね〜!」
そう言ったけど、胸はずっとチクチクしていた。
蓮くんはドアを開ける。私はもうちょっと一緒にいたかった、って気持ちを押し殺して笑顔で手を振る。
すると蓮くんがドアを持つ手を突然離し、私の方に向かってくる。拒む暇もなく、私を抱きしめた。バタンっと、ドアが閉まる音が部屋に響いた。私は抱きしめ返したい衝動を何とか抑えて、その場に立ちすくんだままでいた。すると蓮くんが私に顔を近づける。唇と唇が触れるか触れないかの所で一瞬止まったけど、私が拒まないのを確認して、私の唇にそっと自分の唇を押し付けた。体がほてるのがわかる。とろけそう。そのまま舌を絡めたくなる衝動を押さえ、蓮くんを自分の体から離す。
「だめだよ。」
本当はこんなこと言いたくないのに、言わなければならない使命感に駆られた。
蓮くんは、ごめんと小さく謝った。
じゃあまた来週。蓮くんはそう言って帰って行った。
私はずるい女だ。キスをされるのも拒まなかったのに、した後にダメだよって言うなんて、、、。
その後もずっと私の体は熱かった。ベッドに入って寝るまで、あの時の蓮くんの事が頭から離れなかった。いつもは見せない大人の男の人の顔をして、でもどこか切なそうな、そんな蓮くんのことを思い出していたら涙が出てきた。私何やってるんだろ。祐介はこんないい生活をさせてくれて、こんなに愛してくれているのに、私って本当にダメな妻でダメな人間だ。でも、蓮くんの事を忘れようとすればするほど、私の中でその気持ちは大きくなっていった。私は気づいてしまった。
蓮くんが好きだ。どうしようもないくらい好きだ。
その日は泣きながら眠った。
窓の外は、まだ雨が降っていた。
「家どの辺?」
私は、
「ここからタクシーで10分かからないくらいで、歩いて20分くらいかな。」
と答える。私なんでわざわざ歩いて20分って言ったんだろ、なんかまるで2人で歩いて帰りたいみたいじゃん、、、
「じゃあ、天気も気持ちいし歩いて帰ろ!」
蓮くんがそう言ってくれた。蓮くんはいつも私が求めている返事をしてくれる。そんなことを考えてると、
「さっきはごめん。」
蓮くんが突然言う。
「え、何の話?」
「さっきハンカチ拾った時。俺ちょっと酔ってたわ。ごめん。」
そう言われ、胸がキュッと痛くなった。酔ってたからだったんだ、私じゃなくてもそう言うことしたのかな。そう思いながら、私は人妻なんだからここは全然気に留めていないように振る舞わなきゃ。そう思って、
「全然良いよ!酔ってたらそう言うこともあるよね。でも今日の4人すごい楽しかったし、ずっと仲良い友達でいたいから、もうそういうのは無しにしよ!」
そう、少し突き放したようにも聞こえる言葉を返す。
話題を変えたくて、
「てか、蓮くんあの後も結構飲んでたよね?大丈夫?」
そう言うと、
「正直俺結構酔ってる。でも怜さんも本当はお酒そんな強くないっしょ?酔ってるんじゃない?」
「正直私も結構酔ってる。」
そう言って笑い合った。心地のいい時間だった。
段差で少しよろけそうになった私の体を、蓮くんが支える。
「大丈夫?」
そう言う蓮くんの方に顔を向けて、大丈夫だよ、ありがと!そう言おうとすると、また蓮くんの顔が思ったより近くにあって、びっくりして言葉が出ない。
分厚い柔らかそうな唇。このままキスしちゃいたい、、そんなことを考えてると、ポツポツと、雨が降ってきてた。
「え、雨降ってきた!」
蓮くんが言う。蓮くんは傘買って来ようかと言ったけど、私は、
「走ったらうちまで後3分くらいだから、うちまで走ろ!」
そういって私たちは雨の中を2人で走った。
うちのマンションの玄関に着く。
ビッショビショになったお互いの姿を見てたら、お互い笑いが止まらなくなった。
「久しぶりに全速力した!楽しかったー!」
私がそう言うと蓮くんは、
「怜さん意外と幼い部分もあるんだ、なんか安心した。」
そう言って、私の顔に張り付いた濡れた横髪を取ってくれた。あ〜この人、色んな女にこういうことして、これまでたくさんの女落としてきたんだろうなぁ。そう思いつつも、顔に触れた蓮くんの長い指にドキドキしてしまった。私まんまとハマってるよ、、、ダメだ。そう思ったけど、こんな濡れたまま返すわけにはいかず、でも家にあげるのはダメだ、と思って、
「私家からタオル持ってくるね!ちょっとだけ待ってて!」
と言って、エレベーターに乗ろうとする。蓮くんはありがとう、と言いかけて大きなくしゃみをした。
え、このままじゃ蓮くん風邪ひいちゃうよな。温かいシャワー浴びたほうがいい。そう思い返し、エレベーターから一旦降りる。
「蓮くん風邪ひいちゃうからシャワー浴びて行ったほうがいいんじゃない?」
蓮くんはびっくりしたように、
「いいの?でも寒いからもし良いならそれはありがたい。」
というので、一緒にエレベーターに乗った。でも絶対触れ合ってはいけない。そう思って蓮くんに、
「私男の人家に呼ぶの、蓮くんが初めて!人妻が何してるのって感じだけど、この状況は仕方ないよね。一応ずっと1メートル離れとこ!」
自分にも、蓮くんにも、釘を刺すように冗談っぽく言った。
蓮くんは少し寂しそうな顔をしたけど、そうだね、変なことにならないようにそうしよ!そう言って一歩私から離れた。
「私が走ろって言ったからこんなことになっちゃってごめんね〜」
そう言うと、傘を買いにコンビニまで行ってたらどっちみち濡れてたし、楽しかったからナイス判断だったよ!と言ってくれた。
蓮くんがシャワーを浴びる音がする。何も起こるはずないのに、胸がドキドキする。
シャワーから出てきた蓮くんに、コップに入った水を渡す。
「ありがとう、喉乾いてた。」
そう言って、腰にバスタオルを巻いただけの姿で、濡れた髪をかきあげながら水を飲む。
服を着ている時にはわからなかったけど、思ったより筋肉がある。腹筋は割れていて、男らしい筋肉のついた腕に、速かった鼓動が一層速くなる。
「こんな姿でごめん、服濡れてるからさ、少し乾かしてもいい?」
私の目線に気がついたのか、そう言った。恥ずかしい。体見てたと思われちゃったかもしれない。
「そうだよね、乾くまで私のおっきめのトレーナー貸す!」
わたしは急いで寝室に行き、わたしがいつもオーバーサイズできているメンズのXLのトレーナーを探す。ズボンもダボダボのこれなら履けるかな。
祐介と身長同じくらいだろうから、祐介のを貸せばサイズ合うんだろうけど、それは祐介にも蓮くんにも悪いので、私の服を貸した。
意外とピッタリだったけど、ズボンが短かったようで、膝下半分くらいはズボンからはみ出ていて2人で笑った。
「蓮くん身長何センチ?」
「俺182だよ。怜さんは?」
高い。祐介より3センチくらい高い。
「私は155センチだよ、身長高いの羨ましいなー、蓮くんモデルとかは興味なかったの?」
私がそう聞くと、
「155センチかー可愛い。俺モデルとか絶対向いてないでしょ、多分恥ずくてカメラのレンズ直視できない。」
そう言うので私は声をあげて笑ってしまった。それはモデルとして致命的だね、そう言って2人で笑い合い、蓮くんが可愛いと言ったことはスルーした。
お風呂場で蓮くんの服を乾かす間に、私達は暇だったのでゲームをした。積み木のように色んな形のブロックを積み上げていく、テトラスだ。私はいつもやってるから結構強い。すると蓮くんが
「怜さん強すぎるって」
そう言って私の邪魔をしてくる。
「ねぇ蓮くんずるいよやめて〜!」
そう言って今度はわたしが蓮くんの邪魔をする。
本当に楽しかった。きっと人生で1番楽しかった。祐介の落ち着く居心地の良さとはまた違い、ワクワクするような楽しさだった。いつのまにか、私達の間に、1メートルの距離はなくなっていた。
そろそろ服乾いたかな、私はお風呂場に蓮くんの服を取りにいく。必要以上に乾燥してしまった服にまた2人で笑った。蓮くんといると時間があっという間だな。帰っちゃうのか、寂しいな、そう思ってしまった自分に、心の中でビンタする。一体何を考えているの私は!!
「下まで送るよ」
私はそう言ったけど、蓮くんは頑なに玄関まででいいと言ったので、お言葉に甘えて玄関まで送ることにした。
「ありがとう。本当に楽しかった。」
蓮くんがそう言う。こんなこと、もう一生ないんだろうな。そう思ったらなぜか、一生の別れみたいな気がして、急に切ない気持ちになった。蓮くんを抱きしめたい気持ちを抑えて、元気に答える。
「こちらこそありがとう。本当に楽しかった!また次は、打ち合わせかな?また4人でも遊ぼうね〜!」
そう言ったけど、胸はずっとチクチクしていた。
蓮くんはドアを開ける。私はもうちょっと一緒にいたかった、って気持ちを押し殺して笑顔で手を振る。
すると蓮くんがドアを持つ手を突然離し、私の方に向かってくる。拒む暇もなく、私を抱きしめた。バタンっと、ドアが閉まる音が部屋に響いた。私は抱きしめ返したい衝動を何とか抑えて、その場に立ちすくんだままでいた。すると蓮くんが私に顔を近づける。唇と唇が触れるか触れないかの所で一瞬止まったけど、私が拒まないのを確認して、私の唇にそっと自分の唇を押し付けた。体がほてるのがわかる。とろけそう。そのまま舌を絡めたくなる衝動を押さえ、蓮くんを自分の体から離す。
「だめだよ。」
本当はこんなこと言いたくないのに、言わなければならない使命感に駆られた。
蓮くんは、ごめんと小さく謝った。
じゃあまた来週。蓮くんはそう言って帰って行った。
私はずるい女だ。キスをされるのも拒まなかったのに、した後にダメだよって言うなんて、、、。
その後もずっと私の体は熱かった。ベッドに入って寝るまで、あの時の蓮くんの事が頭から離れなかった。いつもは見せない大人の男の人の顔をして、でもどこか切なそうな、そんな蓮くんのことを思い出していたら涙が出てきた。私何やってるんだろ。祐介はこんないい生活をさせてくれて、こんなに愛してくれているのに、私って本当にダメな妻でダメな人間だ。でも、蓮くんの事を忘れようとすればするほど、私の中でその気持ちは大きくなっていった。私は気づいてしまった。
蓮くんが好きだ。どうしようもないくらい好きだ。
その日は泣きながら眠った。
窓の外は、まだ雨が降っていた。