都合のいいオトコ
「あー……はは、かっこ悪いとこ見せてもうたな」
ハライシさんは、気まずそうに笑ってた。店長の言うとおり、プライドを傷つけてもうた。
「ハライシさん、毎日遠いとこから来てくれてて、ほんまに感謝してる。おかげで私も楽させてもらったけど。それでハライシさんの生活が苦しくなるんは嫌やから」
無理して通うんは辞めてほしい、と言うつもりやった。
でも、ハライシさんは情けなく笑いながら、「せやな」と納得したような言葉を口にしたあと、
「じゃあ、1ヵ月くらい休むけど、また来るから」
そんな予定を立て始める。
「……」
このままじゃ、ハライシさんの人生をダメにするような気がした。
──ハライシさんと出会ったのは、この店で勤め始めて間もない頃やった。
お客さんに合わせて、自分のキャラをコロコロ変えて、好みの女の子を演じ、指名を取ってた私。
場内での指名は取れるけど、次の来店で指名をもらえるほど連絡は取れてなくて、A指名ランキングでは最下位に近い順位やった。
店長やボーイは、そんな私に期待なんてしてなかった。
だから、あのときも私はハライシさんにつけられたんやと思う。
「僕は大阪市内で暮らしてるんよ」
常連で、双子のおじさんたちがおってんけど、そのふたりが接待として連れてきたお客さんやった。