都合のいいオトコ
「いやー、さっきの子にも言うてんけど。僕は遠いから、連絡もらっても通ったりできへんし」
お客さんと連絡先を交換するのも仕事やった。
ハライシさんは、私より先についてた女の子には、同じ言葉で断ってたらしいけど。
私は、ボーイから「連絡先を交換したんか?」って確認されるときのことを考え、「それでもいいから教えて」とハライシさんに交換を頼んだ。
来ない人やと思ってても、メールは送ってた。
連絡先を交換してきたお客さんのほとんどが、次の来店時には他の子を指名してるから、単に連絡をとる相手が少なかったのが本音。
それも、あとでボーイにチェックされることを考えての行動やった。ちゃんと連絡を取ってるんかどうか、ケータイを見られることがあったから。
そんなある日、同じように指名が取れてなかった女の子たちに混ざって、上がり待機をしてたら──
【近くまで仕事で来たんやけど、マイちゃんは出勤してる?】
突然、そんなメールが届いた。
「店長! お客さんが来る!」
初めてのA指名。
店長は喜んでくれて、他の女の子やボーイからも「おめでとう」と言われ、嬉しかった。
延長なしの1時間で帰ったけど、私はほんまに嬉しくて、ハライシさんに何度も何度も「ありがとう」って伝えた。