都合のいいオトコ

その週末、ハライシさんはひとりで来店した。

「こないだは同僚もおったから、ゆっくり話せんかったし、今日はひとりで来たんよ」

仕事でこっちに来てたわけじゃないのに、わざわざ足を運んでくれた。

そのことに、すごく感謝したのを覚えてる。

その日、ハライシさんは私に沢山質問をしてきた。

キャバクラで勤めてる理由とか、もうひとつの仕事はどういう仕事なんかとか。

私はアホやから、全部正直に話してて。当時はマコトと付き合ってたから、彼氏がおることも隠してなかった。

「ハライシさん、ごめん。彼氏がおること忘れてほしい。……さっきの会話、ボーイに聞かれてたみたいで……トイレ行ったときに怒られた。彼氏おることは言うたらあかんかってん」

今振り返ると、自分のアホさ加減に呆れてしまう。そんな弁解なんてせんと、数日後に「別れた」って言えば済む話やのに、接客に慣れてなくて、何でもかんでも正直に話してた。

でも、ハライシさんにはそれがよかったんやと思う。

「なんかホッとするなぁ。キャバクラって騙されるイメージがあって、怖い場所やと思ってたけど。……マイちゃんと出会ってから、そのイメージが変わったわ」

ニコニコ笑ってくれて、そこから徐々に来店する頻度も増えていき、いつしか毎日くるようになって……。

同伴も成績になると知ったら、毎日同伴してくれてた。

「昼間も働いてるんやから、僕の席でゆっくりしたらええよ」

そう言って、毎日毎日オープンラスト。

その日常が当たり前のように感じてしまうくらい、長いこと通ってくれてた。
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