都合のいいオトコ
「うちで寝といたら?」
マンションの下で車からおりた私は、コンビニの駐車場へ向かおうとするミツルに、そう声をかけた。
ミツルは少し考えてから、口を開く。
「車置いてくるわ。何号室やった?」
「205号室」
オートロックやからインターホンを鳴らす手順を伝えると、ミツルは車を走らせる。
帰宅した私は、真っ先に部屋のカラーボックスの前に向かった。
でも、少し悩んでから、写真立ては伏せずに、そのままにしておくと決めた。
間もなくして、ミツルはコンビニの袋をさげて、家に訪れた。
以前と同様に、私はすぐシャワーを浴びにいったんやけど、部屋に戻るとミツルは絨毯の上で横になってた。
メイクポーチとドライヤーを持って、テーブル前に座ると、ミツルは目を覚まして、体勢を変える。
「ごめん、起こしてもうた」
「……元々寝てへんから大丈夫」
体を起こした彼は、コンビニの袋から出したペットボトルのふたをあけ、ひと口飲むと、足もとに置いてたドライヤーに手を伸ばす。
「いいよ。ゆっくりしてて」
寝てるところを起こして、迎えに来てもらったことを気にする私は、この時間、ミツルには仮眠をとってもらいたかった。
でもミツルは──
「俺のドライヤー、好きなんやろ?」
そう返して、コードの先をコンセントに差し込む。
以前と同じように、私は髪を乾かされながら、メイクをしてた。