都合のいいオトコ

「連絡とかきてんの?」

何の前触れもなく、突然、質問された。

寝言かと思って顔を見ると、ミツルの目は閉じたまま。でも、口調はハッキリしてたから……。

「誰から?」

とたずねてみると、すぐに返事がきた。

「堂珍」

ミツルは、マコトとの現状を知ろうとしてる。

「なんも。音沙汰無しのまんまやよ」

正直に答えると、ミツルはハッと呆れたように笑う。

「イケメンはやることがちゃうわ」

「……」

私は言葉を選んでた。一度、ミツルとはマコトの件でこじれたことがあったから。

でも、選びすぎてなんも言えんくなってた。

すると、ミツルは再び質問をしてくる。

「……マイの誕生日っていつ?」

「3月」

「3月のいつ?」

「14日」

この流れで誕生日を聞いてきたのは、多分、マコトの存在を伝えたときの──

“私の誕生日には、絶対に連絡が来る”

この言葉を覚えてるんやと思う。

「……ミツルの誕生日は?」

マコトの話題をやめたかった。

また険悪な状態になるような気がして、今度は質問する側に回ろうと思った。

でも……。

「教えん」

「なんそれ」

ミツルは誕生日を言おうとしない。

「私は答えたのに」とふてくされてたら、

「彼女でもないオンナに言う必要ないやろ」

と切り上げられる。

「……そうやね」

そんなふうに返されたら、もう何も言えんかった。自分は聞いてきたくせに、と思ってたけど。
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